元参議院議員 田中しげる

しげるレポート | 田中しげるの活動報告ブログ

[会議録]田中茂 法務委員会(参議院) 2015年4月16日
会議録 2015/04/16

189-参-法務委員会-7号-2015年04月16日-初版

田中茂君

日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中です。

今回提出された矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律案について、何点かお伺いいたします。

私自身、今回の法律案、矯正施設における医官不足解消策、医官の安定的な確保のための施策を講じることにはもちろん賛成であります。ただ、国民の理解を得るためには、法務省としては、まず再犯防止を高め、犯罪と被収容者数を減らす努力を常に行っているということを国民に示す必要があると思います。

さきの委員会でも何度か言われているように、一般刑法犯の検挙総数は連続して減少していますが、再犯率は過去十数年連続で上昇しています。

また、矯正医療費を削減することも大事でありますが、認知件数が減っても再犯率が下がらず、公費で賄う医療費だけは増えていると。

それでは到底納税者の理解を得ることはないと思っております。

その視点で、矯正医官確保に関する質問を行いたいと思います。矯正施設の医療体制の向上、医官の安定確保、そして再犯防止策の強化は、全て私はリンクしていると思っております。

そこで、先ほど話をしましたが、国民の皆さんに納得していただくために、平成二十四年七月に作成された再犯防止に向けた総合対策についての説明をお願いしたいと思います。

高齢化、障害者に対する対策はさきの委員会でも何回か聞いておりまして、地域生活定着支援センターの役割等も聞いておりますので、そのほかにいかなる対策を講じ、その現状と課題についての説明もお願いしたいと思います。

当時の数値目標として、出所後二年以内に再び刑務所に入所する者等の割合を今後十年間で二〇%以上減少させるとしていますが、現段階での数値も分かればそれもお聞かせいただきたいと思います。

国務大臣(上川陽子君)

ただいま法務省において取り組んでいる再犯防止対策ということで、大変重要な課題であると、委員の御指摘のとおりでございます。

その御理解をいただきながら、今回の矯正医師の問題ということについても御理解をいただくことができるというふうに思っております。

ただいま御指摘でございましたけれども、刑務所に入所する受刑者に占める再入者の割合ということでございますが、上昇をし続けているということでございまして、平成二十五年段階で約六割というふうな数字でございます。

世界一安全な国日本のための再犯防止ということもございまして、これにつきましては政権挙げて取り組んでいるというところでございます。

そのための大変大事な課題として、居場所とそして自立した生活を営むための仕事づくり、これが大変大事な課題であるということでございまして、そのための施策につきましては、更に充実したものとしていくべく努力をしているところでございます。

先ほど御指摘ございました刑務所出所者の再入率の現状とそして目標ということでございますけれども、政府挙げての取組の中で、出所後二年以内の再入所率でございますが、十年間で二〇%以上減少させるという目標を設定をしているところでございます。

そのために、協力雇用主の皆様を始めとして、保護司の方々の協力を得ながら、官民協力してその目標に向かって再犯防止に取り組んでいこうということでございます。

再入率ということでありますが、平成二十四年の二年以内再入率でございますが、一八・六%という状況でございます。

二十三年、前年が一九・四%ということでございますので、それに比べて少し減少してきたというところでございます。

そうした取組の要になっているのが、何といっても、地方のあるいは地域コミュニティー、あるいは国民の皆さんとの協力関係の構築、そして何よりもその理解とそして協力を仰ぐということでございまして、そのために、政務三役を中心として、現地の中で、そして協力を仰ぐべく、キャラバン活動ということで動いているところでございまして、再犯防止につきましては、そういう意味でも全力で取り組んでまいりたいというふうに考えております。

田中茂君

法務省の再犯防止に対する努力、ますます頑張っていただきたいと思います。

平成三十三年がその十年後ということになると思うんですが、二十四年に作ったときから考えればですね、是非とも、数値目標二〇%以上減少させるということで期待しておりますので、是非とも頑張っていただきたいと思います。

そこで、矯正施設における現在の年間医療費についてでありますが、平成二十六年に公表された矯正施設の医療の在り方に関する報告書、これを拝見し、平成二十四年十月現在の受刑者数が六万七千六百三十七人に対し、患者数はその三分の二以上の四万五千四百二十四人となっております。

これはこの間、足立先生の資料でも見れるわけですが、日本国民一人当たりの医療費は、二〇一二年度で約三十万七千五百円ですが、六十五歳未満は十七万七千百円、六十五歳以上は七十一万七千二百円であります。

そこで、高齢者の方が罹患する可能性が高く、医療費も高額になるのは、一般国民でも受刑者でも変わらないと思っております。

しかし、受刑者に係る医療費について、ここでお尋ねしたいんですが、年代別と時系列に、その内訳、内容、増加率について教えていただけませんでしょうか。

政府参考人(小川新二君)

近年の被収容者の医療費、医薬品代や外部医療機関での診療等の医療費の推移は、年度によって微減したこともございますけれども、基本的には増加しております。

収容者が減少に転じた平成十九年度以降を見ましても、同年度の予算額が約四十億一千四百万円でありましたけれども、平成二十七年度では約五十八億六千三百万円となっておりまして、両年度を比較しますと約四六%の増加という状況でございます。

この間、矯正施設内で使用する医薬品等の経費はほぼ横ばいでありまして、外部医療機関の診療経費等の増加が医療費増加の主な原因であるというふうに考えております。

以上でございます。

田中茂君

年代別には分かっていないのでしょうか。年代別というのは、六十歳以上とか、四十歳以上とか。

政府参考人(小川新二君)

被収容者の年代別の医療費の推移につきましては、統計は持ち合わせてございません。

ただ、平成十七年度以降、収容人員が減少しているにもかかわらず、七十歳以上の高齢受刑者は四〇%以上増加しております。

また、厚生労働省の統計上、御指摘がありましたように、国民一般の医療費におきましても、高齢になるほど一人当たりの医療費が高額になっている状況がございますので、高齢受刑者の医療費が全体に占める割合は近年増加しているというふうに考えています。

以上でございます。

田中茂君

そうしたら、今年度が五十八億掛かったということですが、全体の人数は減少しているが一人当たりの医療費は増えていると。

その算定といいますか、人数、一人当たりの医療費とその根拠について教えていただけませんでしょうか。

政府参考人(小川新二君)

予算書の項で申し上げますと、矯正収容費に計上されている医療費、すなわち被収容者への薬剤等の医薬、衛生資材費及び外部医療機関での通院、入院費等でございますけれども、平成二十七年度予算は先ほど申し上げましたように五十八億六千三百万円でありましたので、これを被収容者数で割りますと一人当たり約九万五千円となります。

これは人件費が含まれておりません。

人件費につきましては、予算上それだけを、医療関係の人件費だけを切り取るのが難しいという実情がございますので、実際の支給額で計算しますと、刑事施設における平成二十五年に実際に支給した常勤、非常勤の医療関係職員の給与、それから平成二十五年度に支出した医療衛生資材費又は外務医療機関での通院、入院費等の費用を合算しまして、平成二十五年度の一日平均、被収容者数で除した場合には一人当たり約十六万五千円となります。

以上でございます。

田中茂君

先ほど足立先生も何度か同じような質問をされていましたんですが、医療費の高騰にしても、どうやってコストを削減するのか、そのお考えをお聞かせいただきたいと思うんですが。

例えば、先ほどもおっしゃっていましたジェネリック、六七・九%を使っていらっしゃると。

投薬だけではなく、そういった具体的なポリシーですか、そういうのがあると私は思っておりますが、それを含めて、外部医療機関にも徹底しているのか、その点をお聞かせいただけませんでしょうか。

政府参考人(小川新二君)

医療費の削減への取組につきましては、先ほど申し上げましたように、後発医薬品の導入に積極的に取り組んでいるということがございます。

また、先ほど御説明しましたように、平成二十五年度に購入した全医薬品のうちの後発医薬品の割合は六七・九%になっております。

それに加えまして、矯正施設の被収容者が外部の医療機関で受診をした場合の医療費でございますけれども、これは自由診療の取扱いとなるわけでございますけれども、医療費の抑制の観点から、受入先病院の理解をいただきまして、保険診療と同様の診療点数一点十円の受入先病院を拡大するということで努力をしております。

今後も引き続き、後発医薬品の導入促進であるとか、外部医療機関との調整等を行いまして、医療費の抑制に努めてまいりたいと考えております。

田中茂君

本人による保険負担がなく、全て公費で負担することになる被収容者ですので、どこまで治療することが納税者たる国民の理解を得られるのか、なかなか難しい問題だとは思うんですが、その辺をよく認識して徹底的にその辺は詰めていただきたいと思っております。

先ほど答弁の中でちょっとお話がありましたが、経済的な負担がないために診察や薬剤の処方や検査などを執拗に求める受刑者がいると、先ほどの答弁の中でもお話しされていました。

この現状にどのように対応していらっしゃるのか、対策を含む今後の方針をお聞かせください。

政府参考人(小川新二君)

先ほども申し上げましたように、被収容者の中には、過剰な薬剤を要求する者であるとか、あるいは自己の意に沿うような診察、投薬を執拗に要求する者であるとか、時には暴行や脅迫を用いてまで要求を通そうとするような者、あるいは刑務作業等から逃れるために病気を装う者などもあることも事実でございます。

こういった被収容者につきましては、日頃から、被収容者の動静を把握している刑務官あるいは法務教官と医療スタッフとの間で情報交換等を行いまして、医療措置の必要性や緊急性を見極めるなどして対応することとしております。

また、診察の際には、医療費は全て国民の税金により賄われているということであるとか、あるいは薬剤に過度に依存することは健康面から問題があるんだということにつきまして、被収容者に医師から説諭して、不必要な投薬は、治療は行わないようにするとともに、医師への暴行や脅迫等といった事態がないように刑務官や法務教官を立ち会わせることとしております。

こういった対策を講ずることによりまして、適切な診療や薬剤投与に努めているところでございます。

田中茂君

このような姿勢に対して、モラルハザードといいますか、そういう姿勢に対しては断固とした態度で臨むということが大事だと思っております。

そうしないと、医療費コスト削減など様々な面で国民の納得をいただくべく努力をしていただかないと、とても国民としては疑問に思うだけであると思っておりますので、その辺は徹底してやっていただきたいと思っております。

次に、求めるべき医療水準についてでありますが、今回の提出案であります勤務環境等の勤務条件の改善、地域医療機関での兼業が可能、申告を考慮した柔軟な勤務時間などを通じて矯正医官の現況の改善に対し、私自身、一定の効果が生まれるとは、そして必要性も理解します。

しかし、医官不足解消の抜本的対策、そして社会的評価の向上はなかなかこれは難しいと、そう思っております。

先ほど来質問もありましたが、兼業を認めることは、通常、兼業により本業の効率が落ちないことがまずもって大前提であると思っております。

医師は、そもそも心身共に過酷なストレスを強いられる職業だと思っております。

また、矯正医官は受刑者を相手にすることから、一層のストレスを強いられるケースも多いと思います。

それを考えると、例えば兼業による長時間労働などが生じた場合、本業に支障を来すおそれがあると思っております。

そういう支障を来さないような仕組みというか、現在どのようになっているのか、お聞かせいただけませんでしょうか。

政府参考人(小川新二君)

本法案に基づきまして今導入を考えております兼業の許可の特例につきましては、あくまで医師としての能力の維持向上に資する診療を行う兼業につきまして柔軟に認めていこうということでございまして、当然ながら、矯正施設の医療に支障が生じない範囲で、また兼業による心身の著しい疲労のために職務遂行上その能率に悪影響を与えるといったおそれがない場合であることを条件として法務大臣の承認を与えることを想定をしております。

具体的には内閣官房令、法務省令で定めることになりますけれども、その中でも必要な要件、具体的には兼業による心身の著しい疲労のために職務遂行上その能率に悪影響を与えるおそれがない場合であるとか、そういった要件を盛り込んでいきたいと考えております。

そして、その運用によりまして、御指摘のような懸念がないように運用してまいりたいというふうに考えております。

田中茂君

次に質問させていただきますが、先ほど仁比先生がおっしゃった件にもちょっと関わってくると思うんですけど、昨年四月の八日、通常国会で谷垣前法務大臣が、「矯正施設は、国家権力でもって、収容者をその施設の中に入れておく、閉じ込めるわけでございますので、その中にいる間、社会一般の医療水準から見て適正な医療が受けられるようにするのは、これは国家の責務であると申さなきゃいけないと思います。」と答弁されております。

確かにそのとおりでありますが、国の責務といいますけど、その責務を支えているのは税金であり、国民であることも事実であります。また、理由もなく国家権力が収容するわけでもなく、当然、被収容者に帰すべき理由があってそうなっているわけであります。

国民には納税の義務があり、医療を受ける際にも健康保険を支払い、自らの負担をもって医療を受けているわけであります。

そういう背景を考えると、どのようにすれば国民の理解を得られると考えておられるのか。

保険料負担がない被収容者に民間医療と同レベルの医療をどこまで行えばよいのか。

非常に難しい話と思うんですが、大臣に改めて、そのレベル感といいますか、その点についてお伺いしたいと思います。

国務大臣(上川陽子君)

谷垣法務大臣の御発言ということで引用されていらっしゃいましたけれども、この被収容者の健康管理、そして衛生管理につきましては、強制的に身柄を拘束するということでございまして、その拘束する国ということについての責任であるというふうに考えております。

被収容者に対しましては、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし、適切な保健衛生及び医療上の措置を講じることが法律で定められているというところでございます。

その意味では、そうしたレベルの医療を提供するということについてたゆまぬ努力が必要ではないかというふうに考えております。

先ほど、再犯防止との関係で今回の御指摘がございましたけれども、矯正医療につきましては、再犯あるいは再非行防止のための様々な改善指導、あるいは職業訓練の徹底と、こういう上でも大変大事な要素であるというふうに考えておりますし、また感染症あるいは精神疾患の治療そのものは、円滑に社会に復帰していただくということにつきましても大変大事な不可欠の要素であるというふうに考えております。

そういう意味で、矯正医療そのものが刑事政策上も大変重要な意義を有しているというふうに考えておりまして、その意味で、様々な広報活動も含めて御理解をいただきながら、また同時に御協力もいただくよう努力をしてまいりたいというふうに考えております。

田中茂君

私自身、とにかく国民の理解、納得を得られるようにどのような努力をされているのか、その辺を徹底的に追求していっていただきたいと思っております。

次に、最後になりますが、矯正医官に関する広報活動についてであります。法務省として継続して広報活動の重要性を施策に挙げておられますが、私は大きく分けて二つのオーディエンスがあると思っております。

一つは、医学を志す人々を含めた医療関係者に対してであり、もう一つは、広く国民全体であります。メディアで取り上げることもほとんどないため、そもそもその存在すら知らない人が、矯正医官に関してですが、大多数であると思っております。

このような状況を打開するには、メディアを通じた積極的な認知度向上も必要だと思っておりますが、プライバシーの問題などがありますから、現場の取材は難しいかもしれません。

しかし、問題意識を盛り込んだ映画、テレビ番組や漫画などを通じた認知度向上なども考えてみることも必要ではないかと思っておりますが、その点、御意見お伺いしたいと思います。

政府参考人(小川新二君)

矯正医官関係の医療関係者あるいは国民に対する広報というのは非常に大事だというふうに考えておりまして、これまでも各矯正施設におきましては、地域の医療機関等との協議会であるとか、あるいは矯正医療アドバイザーの委嘱であるとかを行っておりますし、また矯正管区におきましても、管区長が医学関係の大学で講演をするとか、あるいはインターネットに、医師の求人サイト等に広告を掲載するとかといった取組をしております。

また、本省におきましても、医学関係の各種学会に広報ブースを出展するなどして認知度の向上に努めているところではございますけれども、まだまだ広報の努力は必要だと考えておりますし、特に国民全体への広報というのは、これからもっと頑張っていかなければいけないというふうに考えております。

今年度初めて矯正医療の広報予算が認められまして、約一千九百万円余りの予算を認めていただきました。

今後も引き続き、医療関係者だけでなくて、国民全体に対する矯正医官の認知度を高めるための広報活動に努めてまいりたいと考えております。

田中茂君

時間が来ましたので、私の質問はこれで終わりにしたいと思います。

ほかにも聞きたかったことがあったんですけど、せっかく来ていただいたかもしれませんが、割愛させていただきます。

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