前参議院議員 田中しげる

しげるレポート | 田中しげるの活動報告ブログ

衆議院議員選挙と保守化傾向
衆議院議員選挙と保守化傾向
レポート 2017/10/31

<選挙結果>

 台風が日本列島を襲う中で行われた総選挙。終わってみれば与党の数は選挙前と変わらず、数だけを見れば大山鳴動ネズミ一匹の類と感じた方も多いでしょう。しかし希望の党や立憲民主党の設立、民進党の分裂など、今後の与野党の対立軸を変化させる新たな動きも生まれました。

 日本の有権者の政治意識を大別すると右派が3割、左派が2割、中道が5割ということだそうです。これは、5割を占める中道の動き如何によって選挙結果が異なることを意味します。この層は、その時々の政権の政策や姿勢によって支持する対象を変えていきます。民主党が自民党から政権を奪った2009年の総選挙では、この層がこぞって民主党を支持したということになります。
 今回の選挙では、中道層は前回の選挙時と同じく政権与党を支持しました。そこには様々な理由があります。真っ先に挙げられるのは与党と対立する側の自爆的ミスでしょう。そのことはマスコミで散々分析され、語られていますので繰り返しませんが、そのミスによって躍進したのが立憲民主党です。
 立憲民主党の支持層のうち最も高かったのは60代で、ついで70代でした。この世代はいうまでもなく団塊の世代で、大学闘争や学園紛争を経験した世代です。その背景には自由、平等、平和主義、個人主義を柱にした戦後教育、それも日教組の影響があると考えられています。したがって憲法改正に関しても反対の人が多いことでしょう。
 
<世界的な保守化傾向>

 今回の選挙の結果を見て思うことは、世界的な傾向である保守化が日本でも強いということです。森友、加計問題、防衛省問題等々と続いた安倍内閣の強引な政治手法、失政にも関わらず与党支持は変わりませんでした。そこには当然ながら民主党政権の失敗のトラウマがあります。当時、長期政権だった小泉政権を引き継いだ安倍晋三、福田康夫、麻生太郎首相の3政権に対する批判が高まり、考えられなかった政権交代が実現しました。それだけ国民の期待が大きかったわけですが、知っての通りの結果となりました。
 前年の2008年、アメリカでは大統領選挙が行われ「チェンジ」を合言葉にした民主党のオバマ候補が勝ち、初の黒人大統領の誕生となりました。これは明らかに8年間続いたブッシュ政権に対する失望、批判の結果といえます。
 日本の民主党の政権交代にもオバマ政権のチェンジの影響が強くありました。ブッシュ大統領によって行われたアメリカの強権主義に対して、世界が新しい変化を求めていたともいえるでしょう。アメリカではレーガン大統領を継いだ共和党のブッシュ大統領のあと、民主党のクリントン大統領、共和党のブッシュ大統領(息子)、民主党のオバマ大統領、そして今回の共和党のトランプ大統領と、パパブッシュを除けばそれぞれ2期8年間の任期を共和党と民主党が交互に担っています。アメリカでは政権交代が交互にスムーズに行われていることを示しており、国民の選択が振り子のように正確に右と左に振れています。

 しかし、それにもかかわらず時代の風潮は保守化に向かっているといえるでしょう。その象徴的存在がトランプ大統領で、その自国ファーストの政策により保守化が加速された観があります。アメリカ国内に限らす、ヨーロッパでもEU内の経済格差、難民の受け入れや移民問題などが噴出し、愛国主義的な保守化傾向が強まっています。EUの牙城であるドイツですら、9月に行われた選挙の結果、メルケル首相の政権運営が単独では出来ない状況になりました。それだけでなくオランダ、フランス、オーストリア、イタリアなど各国で愛国政党、保守政党、中道右派と呼ばれる政党の躍進が目立っています。
 さらにスペインでは、州民投票によって独立宣言を行ったカタルーニャ州に対して、政府が自治権停止を決定しました。これに対する州民の反発は強く、政府と対立するという極めて危険な状態になっています。サッカーファンならおなじみのリオネル・メッシが所属するFCバルセロナは、スペインリーグからの脱退を示唆するまでに至っています。また州内では、独立賛成派と反対派の対立が深刻になりつつあります。
 民族の独立運動と保守化は必ずしも一致するわけではありませんが、他民族間との連帯ではなく、単一民族としての独立を勝ち取ろうとする背景には自らの歴史や伝統、文化を守ろうとする保守主義の意識があります。また、自分達が納めた税金を自分たちのために使えないという不満もあります。とりわけカタルーニャ州は豊かですから、この思いも強いでしょう。そして、この独立運動が単にスペイン一国の問題ではないから厄介です。ヨーロッパ全体を巻き込んで民族の独立運動が活発になる可能性すら秘めています。
 同じように移民や難民の問題は排他主義を招いています。実際、行くところのない側と、受け入れる側の両者にとってその対立は深刻です。しかし、不健全な愛国心や排他主義が過激になれば、その行く着く先が悲惨な戦争であるという過去の経験を忘れてはいけません。

<憲法改正論議>

 日本で強まった保守化傾向のひとつの到達点は憲法改正にあります。今回の選挙で自民党は具体的な改正の内容を掲げて選挙に勝利しました。1955年に自由民主党が結成され、憲法改正が党是とされて以来60年余が過ぎて、初めて憲法改正が現実的な問題として国会の場で議論されることになります。
 安倍首相が公約として掲げた最も重要な点は、自衛隊の明記です。これは憲法9条の第2項にある「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という戦力の不保持に抵触します。したがって自衛隊を明記するということは憲法の改正を意味します。
 しかし、これは慎重にも慎重を期して進める必要があります。強権的な手法をとれば、国民投票において半数以上の国民の賛成を得ることは難しいでしょう。確かに現在、日本は北朝鮮や中国の武力による脅威にさらされています。自らの力で国を守ることは当然のことです。しかし、戦後の日本はそれを放棄してきました。そして、それが当然かのように平和を享受してきたのです。それが許されない状況になったことは周知の通りです。早く国を守るための整備をしなければなりません。そのための第1歩が憲法の改正による自衛隊の明記といえるでしょう。ただ、拙速は禁物です。国民によく理解してもらうことが肝要だと考えます。

<憲法改正の理念>

かつて私なりに憲法について記したことがあります。その一部を抜粋したいと思います。

─ 私が思う次の世代にふさわしい憲法改正とは、先ず、国民の魂を自由に解放するものであるべきだと思います。そもそも国家とは、特定の歴史性と文化性を共有する共同体です。この日本が個人の生命を越えて連綿と続いてきたのは、国民一人一人に国家観、国家意識が存在したからです。換言すれば、他の国に誇れる素晴らしい文化や歴史をつくり、子々孫々まで伝えたいという自覚が、国民にありました。独立自尊、独立不羈の気概から、国民的誇りの感情や国に対する名誉という考え方が生まれ、国民の人生の充実にもつながっていたのです。

─ しかし、国家の否定は、結局は自分たちの文化、歴史の否定であり、自らの存在の否定につながります。生きる喜びもなければ、ましてや誇りも生まれません。国民一人一人の幸せもあり得ないのです。今こそ日本国民が忘れかけた独立精神、自立の気骨や国家の名誉という観念を呼び覚ますべきだと思います。私たち日本人の魂を再度取り戻し、この国に生まれてよかったと堂々と言えるような日本を子孫に伝えていく、これが私たちの責務であり、その絶好の契機が憲法改正だと思います。

─ ところが、日本国憲法第9条2項(1項は不戦条約を踏まえており残しておく)では、非暴力、武力なしの無抵抗主義をとるべきとの態度を示し、世界の潮流とは全くかけ離れた内容になっているのが現状です。国連憲章では、自由を侵害するものは武力を行使してでも排除すべきであると主張しています。平和とは座して転がり込んでくるものではなく、勝ち取るものというのが世界の厳然たる現実なのです。現憲法を護り続ける限り、日本は世界協調の場で異端者扱いされる恐れが十分にあります。

─ 憲法改正は目的ではありません。この国のあるべき姿、目標を実現するための手段なのです。また、憲法は国家権力を制限するためのものだけではありません。それならば最もその機能が必要なのは、社会主義体制、共産主義社会を唱えている国に対してであります。
本来、憲法は国民としての個人個人の権利と幸せを護るためのものなのです。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
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