前参議院議員 田中しげる

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日本の借金に対する政治家の姿勢
日本の借金に対する政治家の姿勢
レポート 2018/12/17

 日本は借金大国だとよくいわれますが、借金はどれくらいあるのでしょうか。財務省が昨年12月末に発表した「国債及び借入金並びに政府保証債務残高」によれば、

国債 :956兆2,520億円(前年度期末比 +21兆3,517億円)
借入金 :53兆7,128億円(前年度期末比 -4兆361億円)
政府短期証券 :75兆7,890億円(前年度期末比 -6兆4,502億円)
合計 :1,085兆7,537億円(前年度期末比 +14兆1,943億円)

 この借金の総額は国民1人当たりに換算すると、約867万円となります。3人家族だと約2,600万円。年到底返せる額ではありません。
 では、なぜこのように借金が膨れ上がったのか、なぜこのような額になるまで借金を続けてきたのか、またこのままにしておいていいものなのか、国家運営に問題はないのか、国民生活は守られるのか、様々な疑問が湧いてきます。

 そもそも国家の借金は、家計と同じように歳入(収入)と歳出(支出)の差であり、借金があるということは歳入より歳出が多いわけです。これを補うためには資金を調達しなければならず、そのために発行されてきたのが国債(公債)です。国は毎年、各省庁が予算を作り、それを財務省が調整する単年度予算を組みます。その結果、最終的に赤字が出れば、その分の国債(赤字国債)を発行して補うことを繰り返してきました。
 池田勇人(1899~1965年)政権までは赤字国債の発行はありませんでした。当時の池田総理は、戦前の赤字国債の怖さを充分承知していたからだといわれますが、日本経済も順調でした。自ら「所得倍増計画」を打ち出したように、高度経済成長が始まり税収が伸び、赤字予算を組む必要がなかったのです。
 最初に赤字国債を発行したのは、佐藤栄作(1901~1975年)政権下の福田赳夫(1905~1995年:後の総理大臣)大蔵大臣です。福田大蔵大臣は池田総理と異なり、景気回復のための赤字国債の発行に積極的でした。戦後初となる、赤字国債の発行に関する特別法が国会に提出されたのは1965年11月のことです。東京オリンピックが終わり、「(昭和)40年不景気」の最中でした。赤字国債の発行については戦前の忌まわしい記憶が思い起こされ、国会の議論は白熱しました。
 しかし、翌年1月に成立。発行額は2,500億円でした。当然ながらお金の価値が違う時代のことですから、現代にあてはめれば1兆円ぐらいになるのかもしれません。ともあれ、国の赤字は雪達磨式に増え、その後の約50年間で、なんと5,000倍近くにもなったのです。
しかし、やみくもに赤字国債が発行されたわけではありません。それぞれの時代の景気を判断し、最終的には総理大臣が認可し国会に諮られます。従って国民が認めた形で行われていて、その意味では国民も決して無関係ではないのです。

 では、何故国の経済が赤字になるのでしょうか。基本的にはその年、その時代の景気状態が大きく関係します。景気が良ければさまざまな税収が増え、国の収支がマイナスになることはありません。従って赤字国債の発行は、収支のマイナスを補填し景気を刺激するために投入されてきたのです。
 たとえばバブル崩壊後、景気浮揚のために公共投資が盛んに行われました。何度も同じことが行われましたが、赤字が増えたのと、その仕事に関わった業界や関係者だけが恩恵を受けたに過ぎませんでした。公共投資の結果立派な道路や施設が増えましたが、1時間に車が数台しか通らない道路や、箱物ばかり造ってどうするのだと批判も浴びました。景気浮揚を目的にして行われたものが、かえって国の赤字を増やすという結果が繰り返されました。
 バブル崩壊後の日本の経済を、当初は「失われた10年」と呼んでいましたが、それが20年になり、最近は「失われた30年」といわれるようになりました。
 なかでも小泉純一郎政権時代(2001~2006年)は、5年間で283兆円を超える赤字国債を垂れ流しました。日本一の借金王といわれる所以です。現在、日本が抱えている赤字の4分の1は、小泉内閣時代の負の置き土産といえます。将来に多額の借金を残す政治を続けたにもかかわらず、国民的な人気を維持しました。その意味では国民の責任も重いといえるでしょう。

 国の借金については政治家の努力が足りず、問題提起もしてこなかったことは歴然としています。身を切ることもしませんでした。定数の削減が叫ばれているにもかかわらず、自分たちの都合で参議院の定数増がこの夏に行われたことは、記憶に新しい一例です。金額の多寡よりも、政治家の精神や姿勢に問題があるといえるでしょう。
 2013年から始まった安倍政権も、ご多分に漏れず赤字国債を発行し続けています。一方で、税収が上がり返済も行っています。ただ、安倍政権下では、黒田東彦日本銀行総裁のもと、日本銀行の積極的な国債買いが始まりました。新しい展開です。それまでは、国債の主な購入者は民間銀行などでしたが、いまや逆転して日本銀行がトップになっています。
 実体経済の動きを読むのは難しく、なかなか理論通りにはいきません。日本銀行は異次元といわれる低金利政策を取りましたが、2年間で物価を2%上昇させ、デフレ状態を脱するという当初の目標を達成できなかったどころか、現在なお達成できていません。その原因のひとつは実質賃金が下がっていることにあります。業績が上がっている企業も、利益をプールすることに走り、賃金にはなかなか反映されていません。溢れているはずのお金が下流まで流れて来ず、いざなぎ超え景気と言われても実感出来ない人が多いのではないでしょうか。
 大多数の人たちは生活防衛のために支出を抑えた生活を続けています。これでは物価は上がりません。日銀は国債を買い、年間6兆円のペースで株を買って株価を支えています。それで景気はなんとか維持されているように見えますが、それをいつまで続けるのか、また続けられるのでしょうか。

 日本の莫大な借金に対しては楽観論と悲観論があります。簡単に紹介しますと楽観論の根拠をなすものは、

●国民の貯金が1,700兆円あるから、最悪の場合は銀行を封鎖し、預金を強制的に拠出させれば約1,100兆円の借金は片付く。
●国の資産が574兆円(2015年3月末)あり、日本の対外純資産は官民合わせて366兆円(2014年末)ある。
●借金は円建てで、海外保有率は6.1% (2018年)に過ぎず、いざとなれば紙幣を刷ればいい。ギリシャの経済危機の場合は、ユーロ建てで、自国で刷ることが出来なかったためであり、日本の場合は国内で解決がつく。
●現在、赤字国債を一番多く引き受けているのは日本銀行である。日本銀行はその分のお金を刷り、どんどん国債を買い増し、いずれ景気がよくなれば、

 国から返してもらえばいい。政府と日本銀行の間の取引だけで、誰にも迷惑はかからない。
大体は以上ですが、国の資産には道路や建造物なども含まれており、換金性は不明ですし、誰に売るかの問題もあるでしょう。またお金を刷ることに関しては、現実にそのような状態ですが、市場にお金が出回り過ぎれば、ハイパーインフレ状態を招く危険性をはらんでいます。かといって、国債を買い続けなければ、景気が後退する恐れがありますし、金利が上昇すれば今保有している国債に巨額の含み損も発生します。

 悲観論に関していえば、借金経営は正常な状態ではないからすべきでないというそもそも論であり、この莫大な借金を無責任にも次世代に残してはいけないという主張で、しごく当然です。そこには、バブル崩壊後の30年間、景気がよくなるどころか、愚策を繰り返してきただけではないか、という政治に対する批判がこめられています。しかし、では具体策としてどうするのかといえば、妙案はないといえるでしょう。
 安倍首相はアベノミクス、3本の矢の経済政策を掲げて華々しくデビューしました。しかし、その政策が失敗したことが判明してから、有効な経済政策を打ち出すことができないままでいます。2020年のオリンピック需要はあるものの、その後は景気が落ち込むと予測しているエコノミストが多いのは、1964年の東京オリンピック後に「(昭和)40年不況」に襲われた過去からも十分に想定できることです。その不況対策として、先述した最初の赤字国債が発行されたのです。
 今回も不況に陥れば、また借金が増えるのでしょうか。来年の消費税の10%への引き上げにより、5兆円強の増収が見込まれています。そもそも、社会保障のための消費税増税という建て付けであったものを、昨年その使途の一部を少子化対策に変更し財政健全化は先送りすると言い出しました。その一方で、増税の影響で消費が落ち込みGDP成長率に影響が出ることを恐れて、来年の予算案では増税対策が目玉になり、マイカーローン減税などを取り入れています。誰しもわかるようにあちこちで論理破綻しており、場合によっては財政健全化どころか、国の借金がさらに増える恐れもあるでしょう。しかし誰かが、どこかで、国の借金について真実を語り、国民に向き合い協力を仰ぐべきでしょう。このままでは、子や孫の代にまで自分達の借金を残すような無責任なことになります。

 中曽根元総理は「増税なき財政再建」を掲げ、積極的に財政再建に取り組みました。当時と今とでは、国際政治上の力学も経済情勢も異なるので比較は難しいものの、中曽根元総理の5年間の任期中4回の予算編成を行い、その強烈なリーダーシップで、その間、ゼロシーリングどころか、マイナスシーリングで赤字を出さないように予算の上限を決め、それを各省庁に厳しく守らせました。その効果は総理退任後に現れ、赤字国債を発行せずに予算を組むことができたのです。これを実行したのは、後にも先にも中曽根元総理のみです。その間の事情は、大蔵省出向の秘書官であった小粥正巳(こがゆまさみ:後に大蔵省事務次官)氏が詳しく述べていますので、それについてはあらためて紹介したいと思います。
 日本の借金の処理について、元総理は次のように提言しています。
 「財政を再建するには、今回はかなり長期間の、息の長い努力が必要です。おそらく10年から20年はかかるでしょう。(中略)再建を進めるには、与野党及び国民が、再建について軸となる基本的考えを支持し、将来の行動を合意しておく必要があります。そこで、財政再建の目標、具体策、工程管理表を定める[財政再建基本法]を各党合意のもとで制定し、(中略)全国民の支持と協力のもとに、これを推進する必要があるのです。」
 そして「長期債務の相当部分を『塩漬け』にして、相当の将来にわたって棚上げすることです。もちろん利子は払う。それと同時に毎年の中央・地方の歳入不足補填を、全力を振るって減少させ、できるだけ早く、毎年の赤字債務をゼロにして、中央・地方の長期債務の増加をストップさせ、次に、減少に向かわせることです。そのための中期計画を、中央と地方で協議しながら策定し、国民と国会の理解と支持を得て、営々と実行することです」と述べています。
 つまり、いまできることを確実にやっていくということです。膨れ上がった日本の借金を一気に返すことは不可能です。一般家庭でも、借金があれば収入を増やすか支出を減らすか、少なくともそのどちらかを行わなければなりません。すぐに収入を増やすことが難しければ、まずは支出を減らすべきなのは、国も家庭も変わりません。しかし、これまでの政府にその姿勢は見られたでしょうか?すべての政治家はこの現実を直視すべきでしょう。私達の世代の負の遺産を、将来の世代に決して残すべきではありませんし、そのことにこそ「真摯に」向き合わなければならないのです。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
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