前参議院議員 田中しげる

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財政赤字と消費税―OECDの提言
財政赤字と消費税―OECDの提言
レポート 2019/05/20

 OECD(経済協力開発機構)は先月15日、年々膨れあがる日本の財政赤字について、黒字化に向けて消費税を20%から最大26%に引き上げるよう提言しました。これは2年に一度行われる「対日経済審査報告書」の中で示されたもので、日本の債務残高はGDP(国内総生産)に対する割合で見て、OECD加盟国の中で過去最悪の水準にあり、安定的な財源である消費税を上げることで歳入増加を図るべきだとしています。
 財政赤字の危うさについては以前この投稿でも取り上げています。しかし一方で、日本の財政赤字の特殊性を論じ、日本銀行がお金をどんどん刷って、政府が赤字補填用に発行する国債を買えば問題ないという指摘もあります。その根拠は、赤字のほとんどは政府が発行する国債でカバーされ、ここ数年、主な国債の買い手は日本銀行であるということです。日本以外の国が保有する国債の割合は全体のわずか6%にとどまっています。仮にそれが売られたとしても大きな問題ではなく、外国からの影響もないというわけです。
 実際に、「インフレ率が一定の水準に達するまでは財政支出をしても構わない」とするMMT(現代金融理論:Modern Monetary Theory)が注目されていて、日米間で論争となっています。
 2019年の日本の実質GDPは約540兆円、それに対し財政赤字は約1103兆円(2018年度末現在:財務省発表)と2倍になっています。消費税を増税することにより、早く財政の健全化を図り解消すべきというOECDによる提言に対し、MMTを唱える経済学者はそのような必要はないと主張します。何故なら、現実に日本の社会はインフレ状態ではないこと。そして日本においては、「自国通貨建ての債務は、返済不能にならないと市場が認識しているから」だというわけです。また、そもそもインフレはマネーの過剰ではなく、モノの不足から起きるのだという考え方が理論の根底にあります。お金をどんどん刷っても、モノが豊富にある限り、すぐにインフレ状態にはならないということです。
 しかし、国債を大量に購入している当の日本銀行・黒田東彦総裁は、「MMTは必ずしも整合的に体系化された理論ではない」という認識を示し、「財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は極端な主張だ」としています。とは言うものの、日銀のこれまでの政策を変えるわけではなく、「大切なのは市場の信認をしっかり確保することだ」と述べています。つまり、市場の信認がある限り今の政策を続けていくということになります。
 ただ、これだけ日銀が介入して経済を支えているにもかかわらず、景気が良くなったと大多数の国民が感じているわけではありません。それどころか実質賃金は下がっています。そこに10月から消費税が10%になるわけですから、さらなる景気の落ち込みが懸念されます。しかし、それにしても消費税が最大26%というのはどういう世界なのでしょうか。消費税が8%に上がった2014年は、消費が落ち込み景気が悪くなりました。今回は軽減税率を取り入れる予定ですが、果たしてそれが本当に有効なのかどうか、懸念されるむきもあります。
 そもそも消費税にあたる付加価値税(VAT)は1968年にフランスで最初に導入されました。平等に広く薄く国民から税を取る手段として考えられたものでしたが、消費税の先進国であるヨーロッパでは年々その率が上昇しています。 
今日、世界で最も消費税率が高いのはハンガリーの27%ですが、ヨーロッパの先進国であるサミット参加国の消費税は英国:20%、ドイツ:19% フランス:20% イタリア:22%となっています。いずれの国も日本の現行消費税の2倍以上です。ただ、それでも国民生活が破綻していないのは、軽減税率の導入にあると言われます。特に生活必需品、たとえば食料品などは非課税だったり、税率が低く抑えられていたりするため、外食など贅沢をしなければ日本より生活がしやすいという声も聞かれます。

個別に各国の消費税(付加価値税)の状況を見てみましょう。

●英国:20%
◆軽減税率(0%、5%)
*0% 食材、赤ちゃん用品、子供用衣服、自転車やバイクのヘルメット、福祉関係のサービス、教育(税が免除)、本や雑誌などすべての出版物、水道、下水道など。イギリスらしいのはペットの餌や植物の種も0%です。
*5% 子供用のカーシート、ベビーカー、一般家庭用の省エネ用品(ソーラパネルや断熱材など)、チャリティ団体運営の住居のガス、電気、燃料など。

●ドイツ:19%
◆軽減税率(7%)
*非課税(0%) 不動産取引、不動産賃貸、金融、保険、医療、教育、郵便など
*7% 食料品、水道水、新聞雑誌、書籍、旅客輸送、宿泊など

●フランス:20%
◆軽減税率(2.1%、5.5%、10%)
*非課税 医療、学校教育、印紙や郵便系手、ロト、競馬の馬券、スポーツくじなど。
*2.1% 一部の医薬品、雑誌や新聞など。
*5.5% 水、食品(チョコレートやキャビア、菓子などは除く)、書籍、演劇、コンサートの料金、映画館の入場料など。パン屋のフランスパン、食事のテイクアウト。
*10%  食料調理品、未加工の農水産物、レストランの食事代、ホテル代、旅客運送、動物園や博物館の入場料など。

●イタリア:22%
◆軽減税率(4%、10%)
*4% 食料品(生鮮野菜、パン、パスタ、牛乳、紅茶、チーズ、バター、マーガリン、オリーブオイルなど)、書籍、新聞、医療補助器具など。
*10% 食料品(米、小麦粉、卵、鮮魚、食肉、ハム、砂糖、果物、酢など)、医薬品、映画、建物、電車賃、ホテル代、レストランでの食事など。

 このように見てくると税率は高いものの、各国が軽減税率でバランスを取っていることがよく分かります。またその対象品目にもそれぞれの国のお国柄がよく表れています。たとえば、英国ではレストランでの食事代や、演劇や映画のチケット代などには軽減税率が適用されませんが、フランスではそれらには5.5%の軽減税率が適用されています。食と文化の国ならではの感じがします。

 消費税は所得の多少に関係なく、日常の生活に必要な広範な物品に一律に等しく税金がかけられます。したがって低所得層にとっては税負担が重荷となります。軽減税率はそのような低所得層の負担を軽くするために導入されます。ところが今回の日本の軽減税率を見ますと、ヨーロッパ諸国と比べ低所得者層への配慮が十分になされているとは言えません。食料品(ぜいたく品は除く)は8%に据え置かれていますが、今後さらに消費税を上げるなら、ヨーロッパのように軽減税率のあり方をもっと考えるべきでしょう。
 政府は10月に消費税を10%に引き上げ、増加する社会保障費や教育の無償化などにあてるとしています。しかしすでに中国経済の低迷や貿易収支の悪化などから、景気が後退しつつあることもあり、経済全体に与える影響が懸念されています。軽減税率やキャッシュレスで購入の際の2%還元を導入するといっても、現行の税率以下にはならないわけですから、景気が落ち込むことは目にみえています。それをどのようにカバーできるのか。しっかりとした対応策を考えていく必要があります。
 おりしも米国と中国の貿易交渉がまとまらず、米国は5月10日、対中関税を現行の10%から25%へ引き上げました。これに対し中国は13日、600億ドル相当の米国製品に対して、6月1日から最大25%の関税を掛ける報復措置を発表しました。すでに日本の株式市場では株価が5月13日現在、6日間続落していますが、当分株価は低迷がすることが考えられます。また同じく13日に内閣府が発表した3月の景気動向指数が、6年2カ月ぶりに「悪化」に下方修正されました。消費増税どころか、日本経済自体が厄介な状況になりつつあります。
 令和の時代が始まり5月下旬のトランプ米大統領、6月の習近平中国国家主席の來日、大阪のG20、そして7月の参議院議員選挙と政治日程が続きます。米中の経済対立のなかで、日本経済がどうなるのか。それによって消費増税が実施されるか、さらなる延期となるかが決まります。そして、そのことで衆議院を解散するかどうかも決まるのでしょう。当分、政治と経済から目が離せない日々が続きます。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
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