元参議院議員 田中しげる

しげるレポート | 田中しげるの活動報告ブログ

自由民主党総裁選挙 ─ 指導者が必要な四つの資質 ─
レポート 2025/09/24

自由民主党の新しい総裁が10月4日に決まります。臨時国会の首相指名選挙で野党各党が投票先を一本化できなければ、自民党新総裁が首相に就く予定です。

以前、私のコラムでも何度か中曽根康弘先生が示した指導者に必要な四つの要件を紹介しました。
その要件とは「目測力」「結合力」「説得力」、そして「人間的魅力」の四つです。
もちろん指導者には政治理念やビジョン、勇気・情熱と責任感、そして歴史的洞察力・決断力とかの様々な特性が必要なことは言うまでもありません。
しかし指導者が具体的に実務的なことを遂行するためには上記の四つが必要なのです。

石破茂内閣総理大臣は総理就任直後に何の実績を示さないまま衆議院議員総選挙を行いました。当然ながら結果は自民党の大惨敗でした。その後の東京都議会議員選挙、さらに参議院通常選挙でも自民党は惨憺たる結果で、今後の政権運営も全く見通しができないままの退陣です。政治は結果です。政治家が断行した結果が全てであり官僚が残した成果ではありません。
この1年間の内閣総理大臣としての業績を考えても、高額療養費制度では二転三転し、トランプ関税には振り回され、残念ながら石破総理からは「目測力」「結合力」「説得力」「人間的魅力」を見ることが出来ませんでした。

中曽根先生が示した指導者の四つの要件をあらためて説明しておきます。
「目測力」というのは、事態の推移を予測し、自己の政策を遂行するのにいかに問題点を提起し、この問題はどういうふうに展開して行き着くところはどこなのか、それをしっかりと把握できる能力です。
「結合力」というのは、必要な知恵と情報を集め、優秀な人材と適切な政策、そして資金を結合させる力です。
「説得力」というのは、内外に対する鮮やかなコミュニケーションの力です。
以上を遂行する総合的能力には「人間的魅力」が不可欠なのです。
この四つが現代の日本のリーダーに求められる要件です。

今回の自民党総裁選挙の5人の候補者は、現段階でこれらの四つの資質をどの程度持ち合わせているか…。

ところで1年前の自民党総裁選挙では、各候補者から「憲法」に関しての熱い議論がなかったことに落胆したものです。今回の総裁選挙では、「憲法」をどのようにするかという具体的な骨太の議論が行なわれることを期待しています。
去年のコラムでも同様の内容を書きましたが、憲法を改正するとは、政治、経済、外交、教育、福祉医療、安全保障、移民や人権、そして地方自治等を新たに描くことになります。
改正の過程では、政治力の源泉や透明性と緊張感を伴う政治制度、科学技術の発展に伴う国家と社会全般との関係、緊張とバランスある立法・行政・司法の三権、国家内の構造戦略、国家の対外戦略等々も見直されていきます。
すなわち憲法を基軸に、天皇制のあり方、政治、経済、財政、社会福祉医療があり、伝統と文化を背景に生活は営まれるのです。その憲法の枠組みに従って外交、安全保障政策も展開されていきます。
中曽根先生は憲法改正について、次のように述べています。
「広く憲法を検討するという行為は、現代の文明病を治す挑戦という歴史的意味があります。大事な点は、日本の自己主張を基本にすえて、国民参加の文字どおり主権在民の憲法にしなければいけないことです」。

これだけの大変革期の中で、まず日本が行うべきことは国家目標を明確に定めることです。それ行うための「目測力」と「結合力」であり、同時に国民と外国に対する説得、すなわち「説得力」です。そのためには政治家は強いリーダーシップを発揮することが大事なのです。
民主主義とはいい政治家を選ぶ制度であり、いい政治家がいい政党を作ります。いい政治家とは民主主義の本質をよく理解し、国民のためにリーダーシップを発揮できる政治家のことを言うので、いい指導者を選ぶことが民主主義なわけです。
確かに小選挙区比例代表並列制の選挙制度のもとではいい政治家がでるのは難しいかもしれません。しかし世界がこれだけ大きく変化しているわけですから、日本の政治だけが昔のままというわけにはいきません。
国家像も示せない無能な政治家が、国民に対して陳腐な発言を繰り返し小手先だけで誤魔化すような時ではないのです。日本の政治は大きく変革せざるを得ない時期にきていると思います。

次の時代を担う若い世代に夢と希望を抱かせ、悠久の時の流れのなかで洗練されていく伝統と文化を継承発展させる歴史観、さらには豊かな国際性と新時代へ向けてのダイナモとなる国家観を持つ新総裁の誕生に期待しています。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
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