元参議院議員 田中しげる

しげる的 政治のキホン | 田中しげるの視点で、日本の今を説く

原発ゼロ
資源 2014/08/19

日本の産業の根幹である電力エネルギー、特に原発については世論が分かれています。世論調査の結果からは多数の国民が原発稼動について否定的であることは明白です。
原子力発電の導入が成長期日本の産業、経済発展に多大な役割を果たしたことは誰もが認めるところです。問題はそのエンジニアリング及びオペレーションにあります。
原発導入、推進、操業の過程で2つの重大な危険性が内在していました。

その第1は原発自体の安全性です。
原発導入当初から、航空機よりも厳しく、核兵器レベルの基本設計を行い、フォールト・トレラント(絶対に発生させてはならない、真の多重安全装置設置)を図ることが必至でした。また米国のスリーマイル島原発(1979年)、及び旧ソ連のチェルノブイリ原発(現ウクライナ、黒鉛減速沸騰軽水圧力管型、1986年)での重大事故発生を契機として更なる安全性の見直しがなされるべきでした。
しかし、チェルノブイリのような事故は起きないといった安全神話だけが暴走し大多数の国民がそれを信じてきたのです。

第2は放射性廃棄物処理の問題です。
高レベル放射性廃棄物の最終処分場については未決のままです。

高レベル放射性廃棄物の放射能(放射性同位元素の放射性崩壊)により発生する放射線量(あらゆる生命体に致命的である)が充分に減衰するまでには、生物学的放射能半減期の観点からしても300年に及ぶため、人間の生活環境から厳重且つ完全に隔離する必要があるのです。
ところが、後世に多大な負の遺産となる極めて危険な廃棄物を貯蔵する国内の廃棄物処理場を決定できないまま、原子力発電推進が行われてきました。
2011年3月11日の東日本大震災での福島第1原子力発電所事故は、これまで強調されてきた安全神話を一瞬にして崩壊させました。ところが「想定外」の一言で片付けてしまい、結果、3年半近く経過したにもかかわらず、今なお故郷に戻ることのできない住民は13万人に及びます。この内、年間放射線量500ミリシーベルトを超える帰還困難地域の2万5千人に対し、政府は事実上の移住を求めています。その一方で、年間20ミリシーベルト以下の避難指示解除準備区域で生活していた3万4千人に対しては、早期帰還を進めています。しかしながら、完璧な除染も行われていない当該放射線量の地域へ帰ることなどできる筈がありません。
為政者なら故郷を奪ってしまうような状況を屈辱だと思うべきでしょう。己のアイデンティティの原点となる故郷。四季折々を経験し日本人としての原体験を重ねた町や村から避難を余儀なくされたのです。国家には国民の生命、財産、安全を守る義務があります。
日本の将来は何にも勝る宝である子供たちに委ねられているわけですから、福島第1原発の惨状から推察するに、放射能汚染が子供たちの健康に影響を及ぼすようなことが明らかになった場合、国家の根底を揺るがす深刻な問題に発展すると認識すべきです。復興予算の名の下、インフラにバラマキだけを続けているようでは問題解決はありえません。
人類が築き上げた科学技術文明の粋を極めた原子力発電を即廃止するということは、地球規模のエネルギー政策の動向も考慮に入れる必要があります。

隣国中国では、現在30数基が稼動しており、今後総数で50基、更には100基の原発を計画しています。一方、30年前に原発廃止を決定したドイツは、現在、電力を原発大国フランスから購入しており、原発依存であることに変わりありません。

スウェーデンの場合は、1979年に起きた米国スリーマイル島原子炉事故を契機として1980年に原子力発電に関する国民投票が行われ、新たな原子力発電所建設の禁止と、原子力に替わる代替エネルギーが実現できる場合は2010年までに12基の原子炉を廃止すると決定しました。そして1995年から原子炉廃止を開始し2基の原発が停止しました。
ところが、依然としてスウェーデンの総発電電力量に占める原子力の比率は大きく、水力、原子力、火力、風力の占める割合は、47.4%、26.1%、23.5%、および3%です。(2007年)

現在のスウェーデンのエネルギー政策は、

(1) 環境面での持続可能性 (地球温暖化を考慮)

(2) 産業界の競争力維持

(3) エネルギー・セキュリティ (降雨量が少ない年は水力発電による電力が不足し、アイスランド、ロシアから電力供給を受ける必要がある)

この3つを基本とし、同一サイトへの原子力発電の復帰を容認する方針となっています。

スウェーデンでは2004年以降、原発の140万kWの出力増強計画や、原子炉寿命を60年に延長するPLEX計画が進められているのです。またスウェーデン、フィンランドは放射性廃棄物の受入も容認しています。
その他、原子力発電施設をもたないオーストラリアでさえ米国からの放射性廃棄物を受け入れています。即ち世界の趨勢は決して「原発ゼロ」に向かっている訳ではありません。そのような国際情勢の中で、日本は「もんじゅ」等独自の原子力研究を継続する一方で、代替エネルギーを最重要課題とし研究開発を行うのが現実的であるといえます。代替エネルギーについては、太陽光発電、風力発電、地熱発電等、過去長期に亘り研究開発が行なわれてきました。一部実用化も進んではいますが、原発規模の大電力供給に匹敵する代替エネルギーとしての決定的手段とはなり得ていないのが現状です。

バイオマス発電に関しては、数年後に数万人レベルへの電力供給が可能となります。またメタン・ハイドレートの場合、日本近海に、今後100年分の日本のエネルギー消費を賄える埋蔵量があると予測されています。現在その採取方法を巡って、技術開発が急がれています。

日本近海のメタン・ハイドレートが利用可能となり、埋蔵量が期待されるだけの量存在するのであれば、それこそ原発は不要となります。
原発と同等以上のエネルギー構成が可能となるまでは、ある程度原子力に頼らざるを得ないでしょう。しかし、原子力の場合、同じ過ちは絶対に許されません。

ここで、安全対策は過去半世紀以上に亘り怠りなく実行されてきた筈であるという大前提について再考する必要があります。それでも事故が起きた訳ですから、その失敗の本質について時間を掛けずに熟考し、絶対に同じ轍を踏んではなりません。
これまでの「多重防護」の安全対策ではなく、「フォールト・トレラント」の絶対に発生させてはならない、真の多重安全基準と管理体制を首相の決断、政府主導で大至急構築すべきです。即原発ゼロにしないまでも、今後原発に依存することに反対なのは、国民の総意であります。
従って、即刻代替エネルギーを開発可能とするため、研究開発体制構築及び技術革新について、総合的な国の力を傾注しなければなりません。その上で、原発廃止のための工程表を電力会社主導ではなく国主導で作成し、国民の真の理解を求めるべきです。
国民と共有する目標を作成することなく、このまま再稼動を容認していけば、なし崩し的に原発に頼ったこれまでと何ら変わりない、欠陥を内在したエネルギー政策が繰り返し実行されることになるでしょう。

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