元参議院議員 田中しげる

しげるレポート | 田中しげるの活動報告ブログ

人工国家と自然国家
レポート 2024/07/04

 今日7月4日はアメリカの独立記念日(Independence Day)です。1776年7月4日にアメリカ独立宣言が公布されました。
 
 中曽根康弘先生や京都学派・哲学者の梅原猛氏によれば、国家をその成立過程で大きく二つに分けています。一つは人工的につくられた「人工国家」、もう一つは自然に成立した「自然国家」です。
 中曽根先生はアメリカを「人工国家」に分類しました。
 米国はこういう国にしたいと、”目的”を持ってつくられた国です。いわゆるピルグリム・ファーザーズ102名により建国の礎が築かれました。
 彼らは英国の旧体質や宗教的対立から抜け出して、信仰の自由を求めメイフラワー号に乗って新大陸アメリカへ渡ったのです。そして、英国の重商主義政策に対して自治権を求めて戦い、独立を獲得しました。従って米国の憲法、教育、生活、あらゆる面でピューリタンの精神が色濃く残されています。
 仏国も「人工国家」で、フランス革命によりブルボン王朝を倒し共和制を確立しました。旧ソ連や中国も同じことが言えます。両国はそれまで続いた王朝を覆し、共産主義イデオロギーの下に革命によって人工的につくった国といえます。
 日本は、歴史的に革命や独立戦争もありませんでした。自然に国が形成され、南北朝時代の問題はありますが、いまだに万世一系という天皇制が続いています。1974年にエチオピアの皇帝制がなくなり、日本の天皇制は世界最古の皇室となりました。
 日本には数多くの権力闘争はありましたが、いずれの闘争も権力構造の変化はもたらしたものの、国家の土台を根底から覆すものではありませんでした。フランス革命のような王家を絶やすことは起こらず、日本の歴史と伝統文化は守られ続けてきたのです。
 中曽根先生は、このように日本のような国を「自然国家」と言ってます。はるか昔に自然発生的にできた国が民族の長い歴史や伝統文化を基礎に続いているのです。

 ところで、「人工国家」は”目的”を持った国ですから、その”目的”を達成するために極めて戦略的です。日本はそういうものがないので非戦略的です。その違いの一つの例が諜報機関、情報機関を設けている点であり、「人工国家」はそれが極めて発達しています。例えば米国のCIA、旧ソ連のKGB、英国のMI6(正式にはSIS)、イスラエルのモサド等があります。

 現在、北朝鮮の核やミサイルに拉致問題、対中国・ロシア、そして韓国との関係等々、東アジアには様々な問題が横たわっています。さらに日本は極めて脆弱なエネルギーや食糧問題、安全保障、出遅れている研究機関の充実など問題が山積しています。
 そのどれ一つとっても、戦略性なしにその場しのぎで片づけられるものではありません。
 日本の「自然国家」としての歴史や伝統、文化を守るためにも、戦略性を持った創造力豊かな政策を進めることが急務となっています。

※今回は、自著「変えるべき 守るべき 日本の姿」(PHP研究所 2007年)のQ2.「国家の性格」ってなに?の文章をもとに書き直しました。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
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