元参議院議員 田中しげる

しげるレポート | 田中しげるの活動報告ブログ

[会議録]田中茂 法務委員会(参議院) 2015年6月11日
会議録 2015/06/11

189-参-法務委員会-16号-2015年06月11日-初版

田中茂君

日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。

今日は、司法制度改革について幾つか質問させていただきたいと思います。

先月、新聞を見ていますと、司法試験合格千五百人に目標半減という記事がありました。

そこで、平成二十六年度の司法試験受験者数八千十五人に対し、合格者数は千八百十人、平均年齢は二十八・二歳とのことであります。

政府が二〇〇二年三月に閣議決定した司法制度改革推進計画において、新司法試験の合格者数を二〇一〇年頃に三千人程度とすることを目指すとしていたことを踏まえると、それだけの数の人材が毎年新たに法曹界に入ってくることを想定されて人員計画を立てておられたと推測します。

この目標自体は二〇一三年七月に撤回されましたが、先月、政府は司法試験の合格者数を年千五百人以上とする案をまとめ、七月、来月の十五日までですか、法曹養成制度改革推進会議で政府方針として正式決定する見通しとのことであります。

二〇〇二年の司法制度改革推進計画から大きく転換することとなり、三千人という当初のもくろみからすると半減したわけであります。

そこで、この千五百人という合格者数は、合格者の人数を確保したいから人数ありきであって、その人数までは質については不問にするという誤解も招くおそれもあるし、今の方針ではとにかく千五百人以上の合格者を出す、それが第一目的になっているような気もするわけであります。

そこで、合格者数を千五百人以上とした根拠は何か、お聞かせいただきたいと思います。

政府参考人(大塲亮太郎君)

法曹人口の在り方につきましては、私たちの法曹養成制度改革推進室が検討結果を取りまとめ案を作成いたしまして、五月二十一日の法曹養成制度顧問会議にお示ししたところであります。

司法試験合格者数の目標を三千人としていた関係でありますけれども、平成十三年の司法制度改革審議会におきまして、我が国の法曹人口が先進諸国との比較において社会の法的需要に現に十分対応できていない状況にあり、今後の法的需要の増大をも併せ考えると、法曹人口の大幅な増加が急務であるという指摘がなされております。

この課題に対処するために、政府は、当面の目標として、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備状況等を見定めながら、平成二十二年頃には司法試験合格者を年間三千人とすることを目指すべきであるとしたわけであります。

今回の取りまとめ案では、調査により判明した法的需要の状況や弁護士の活動状況に照らしますと、法曹人口は全体として今後も増加させていくことが相当であるとした上で、これまで年間二千百人から千八百人程度の規模の司法試験合格者を輩出している点につきましては、現状において新たに法曹となる資格を得た者のうちの多くの者が、社会における法的需要に対応した活動の場を得ているという点で一定の相当性を認めることはできるとしております。

他方で、法曹養成制度の実情、法曹志願者の減少等の諸事情に照らせば、現行の法曹養成制度を実施する以前の司法試験合格者数である年間千五百人程度の規模にまで縮小する事態を想定せざるを得ず、あるいはそれを下回る事態に陥ることにもなりかねないという危機感を示しております。

その上で、質、量共に豊かな法曹を輩出し、全国あまねく法の支配を及ぼすという法曹養成制度の理念に照らしまして、今後も法曹養成制度の改革を進めて新たな法曹を年間千五百人程度は輩出できるよう、さらにはこれにとどまることなく、より多くの質の高い法曹を輩出できるよう関係者各々が最善を尽くすべきであるとしておるところであります。

質の点でありますけれども、この取りまとめにもあるんですけれども、司法制度改革においては、司法制度を支える人的基盤として、質、量共に豊かなプロフェッションとしての法曹を確保するとされておりますので、私たち推進室が作成した取りまとめ案におきましても、新たに養成し、輩出される法曹の規模に関するこの取りまとめは、法曹養成制度が法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものではないことに留意する必要があるとしているところであります。

田中茂君

人数千五百人の根拠というのはもう一つ分からないんですが、その千五百人、司法制度改革以前の数字が、大体数字がそのぐらいだということですが、そうなると、一体司法制度改革というのは何のためにやったのか分からなくなるんですが、次の質問として、二〇〇二年の司法試験合格者数三千人計画と、あと二〇〇四年の法科大学院の開設、二〇〇六年の新司法試験の開始も、当然ながら司法制度改革の一環であったはずであります。

それが、三千人の当初目標から千五百人では、当然、法科大学院にも、その後の新司法試験にもいろんな影響が出てくると思います。

少々見通しが狂ったというレベルでは当然ないと思っております。

たった十年のうちになぜこれほどまでに方針が変わるのか、当初の計画に無理があったのか、何か別の理由があるのか、その背景について説明をお願いいたします。

政府参考人(大塲亮太郎君)

確かに旧司法試験の制度の下でも千五百人弱の司法試験合格者数が出ていたことは委員御指摘のとおりでありますけれども、推進室が作成した取りまとめ案では、今後も法曹養成制度の改革を進めて新たな法曹を年間千五百人程度を輩出できるよう、さらにこれにとどまることなく、より多くの質の高い法曹を輩出できるよう関係者各々が最善を尽くすべきであるという立場を示しておりますが、御指摘のとおり、三千人という当初の目標は達成できていなかったということはありますので、二年前の平成二十五年の関係閣僚会議決定で、その三千人というのは事実上撤回して、新たに法曹人口というのを調査せよという宿題をいただいたので、今回、その結果を取りまとめたということであります。

その意味では、千五百人程度は旧試験制度の下で輩出していたわけでありますけれども、更に法曹人口を拡大するためには、それまでの言わば司法試験一発の試験で法曹を選んでいくのではなくて、プロセスとしての法科大学院を中核とした法曹養成制度を導入することによってより多くの法曹を輩出できると、こういう構想で来たわけでありますが、実際のところ三千人には届かなかったというところであります。

田中茂君

まず、この司法制度改革の趣旨なんですが、法曹人口の増加と多様な人材を確保することであると、国民にとって頼りがいのある迅速な判決、権利の実現を期待できる、すなわち、質、量共に豊かな法曹、国民に身近で利用しやすい司法という理念であったわけであります。

その基本が瓦解したわけでありますので、司法制度改革そのものへの信頼性が失墜する可能性もあると思っております。

そこで、関連した質問なんですが、司法試験予備試験に関してお聞きしたいと思います。

この司法試験予備試験について、二〇一一年から法科大学院を修了しなくても司法試験受験資格を与える予備試験が実施されておりますが、なぜこのように二つの道を設けることにしたのか、その目的をまずお伺いしたいと思います。

政府参考人(大塲亮太郎君)

司法試験の予備試験、司法試験予備試験といいますけれども、これは経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由によりまして法科大学院を経由しない人にも法曹となろうとする道が確保されるように設けられた試験であります。
〔委員長退席、理事熊谷大君着席〕

田中茂君

二〇一一年には予備試験の受験者志願数が法科大学院の志願者数を上回る状態でありますが、合格率は極めて低く、予備試験に合格できず法科大学院に入っているとも聞いております。

そこで、先ほどおっしゃっていましたが、経済的な理由等で法科大学院へ進むことが困難な人にも司法試験の受験の道を確保すべきであると、そういう考え方は理解しております。

その意味で、予備試験などの措置を講じることは否定しません。

しかし、現状の予備試験は受験資格に経済的困窮などの制限がありません。

どちらが司法試験合格に有利かを比較して、先に予備試験を受験し、それに落ちたら法科大学院へ行くと、そういう学生もいるとも聞いております。

それでは、経済的な理由等で法科大学院へ進むことが困難な人を想定した当初の目的とは全く違った現状が生まれているわけであります。
〔理事熊谷大君退席、委員長着席〕
また、確かに法科大学院での学費はかなり掛かるのは事実ですが、最近の法科大学院の学生確保策として奨学金制度も充実しているとも聞いております。

それを考えると、果たして経済的な理由等で予備試験という道を設けたことに意義があるのか、疑問に感じざるを得ないわけであります。

一定の受験資格制限をするなどの対策を講じないと、法科大学院の存在意義が薄れて、存続がますます厳しくなってしまうのではないかと思われますが、この件について御意見を聞かせてください。

政府参考人(大塲亮太郎君)

予備試験は、経済的事情や既に実社会で十分な経験を積んでいるなどの理由により法科大学院を経由しない人にも法曹となろうとする道が確保されるように設けられた試験であります。

大学生や法科大学院生が多数受験し合格しているなど、本来の制度趣旨とは異なる状況が生じているのではないかという指摘があります。

その一方で、出願時の申告によりますと、毎年の予備試験の受験者の過半数を占める、無職、会社員、公務員等といった者につきましては、法科大学院に進学できない者あるいは法科大学を経由しない者である可能性が認められまして、予備試験がこれらの者に法曹となろうとする道を確保するという本来の制度趣旨に沿った機能を果たしていると考えられます。

法曹養成制度改革推進室といたしましては、こうしたことを踏まえまして、法曹養成制度改革顧問会議の意見も聞きながら予備試験に関する方策の在り方について検討しているところでありまして、この検討結果は本年七月十五日の設置期限までに法曹養成制度改革推進会議へ報告し、同推進会議におきまして判断が出されるものと認識しております。

田中茂君

その予備試験に関して、また法学部の学生の予備試験合格後、法科大学院には行かないで司法試験を目指す学生の増加というのもあるみたいですので、その点についてちょっとお聞かせいただきたいんですが、法科大学院設置を打ち出した司法制度改革審議会意見書、平成十三年に出したやつなんですが、かつての司法試験の現状について、合格者数が徐々に増加しているにもかかわらず依然として受験競争が厳しい状態にあり、受験者の受験技術優先の傾向が顕著となってきたこと、司法試験における競争の激化により、学生が受験予備校に大幅に依存する傾向が著しくなり、ダブルスクール化、大学離れと言われる状況を招いており、法曹となるべき者の資質の確保に重大な影響を及ぼすに至っていると指摘し、質の高い法曹を養成するためにプロフェッショナルスクールとしての法科大学院の設立を提言したと、そう承知しております。

この提言を受け、文科省が発表した告示で専門職大学院に関し必要な事項について定める件ということで、第五条、法科大学院の教育課程ということですが、第五条に四つほどあるんですが、法律基本科目、あと第二の法律実務基礎科目ということで、法曹としての技能及び責任その他の法律実務に関する基礎的な分野の科目をいうと、この二番が入っておるんですが、あと、基礎法学・隣接科目、展開・先端科目、それぞれあると承知しております。司法試験科目だけでなく、広く多様な科目を履修すべきことは法曹としての責任を受容するということにおいてはとても重要だと、そう思っております。

しかし一方で、予備試験の合格者はこのような科目を履修せずに司法試験を受験することとなるわけであります。

さらに、司法試験を目指す法学部学生は、大学在学中から、先ほど言いましたように、司法試験予備校の予備試験コースの特訓を受け、合格後は法科大学院に行かないで司法試験を受験する学生がいると、先ほど言ったように、聞いております。

これでは、そもそも、法科大学院の志望者が減少し、法科大学院が目指した質の高い法曹養成が困難になってしまうのは明らかであります。

何らかの改革が必要と考えますが、その点、いかがでしょうか。

政府参考人(義本博司君)

お答えいたします。

委員御指摘のとおり、二十一世紀の司法を支えるふさわしい資質、能力を備えた人材を法科大学院を中核とするプロセスとしての養成により行うということが司法制度改革の基本的な考え方であるというふうに認識しておりますし、プロセスとしての法曹養成の理念をしっかり堅持していく観点からは、法科大学院の魅力を高めていく、その中で志願者の回復を図り、質の高い法曹を安定的に社会に送り出していくということが重要であると考えておるところでございます。

文科省におきましては、昨年十一月に法科大学院の強化と法曹養成の安定化に向けた総合的な改革方策を策定し公表し、今現在、改革に取り組んでおるところでございます。

具体的には、累積合格率を七割から八割を目指せるような定員規模の実現など、将来の見通しを持って法科大学院を志願できるようにするために、公的支援の見直しの更なる強化を最大限活用して入学定員の見直しなど組織見直しの促進を図っていく、あるいは海外のロースクールへの留学ですとか、地方自治体、企業との連携によって魅力ある教育プログラムを開発、実施するとか、さらには、法学未修者教育の充実ですとか、進級判定のための共通到達度確認試験を導入するとか、あるいは累積合格率など客観的な指標を活用して認証評価を厳格にするなど教育の質の向上を図る、さらには、早期卒業、飛び入学などの制度の活用ですとか、あるいは奨学金の充実を始めとして、時間的、経済的負担への対応など、誰もが法科大学院で学べる環境づくりというふうな観点から、平成二十七年度から平成三十年度までの期間を法科大学院改革の集中期間といたしまして抜本的な改革を実施することとしているところでございます。

文科省としましては、これらの取組を通じまして、引き続き、法科大学院に有為な人材が集まるよう、法科大学院教育の充実、改善に取り組んでいきたいと存じます。

田中茂君

いろいろなことをやっていくということなんですが、現実的に予備試験合格者の司法試験合格率は六六・八%で、法科大学院修了生の合格率は僅か二一・二%であります。

それで、今回、司法制度改革の、先ほど言いましたように趣旨でありますが、質、量共に豊かな法曹、国民に身近で利用しやすい司法のための手段がどこに力点を置いているのか分からないわけでありまして、法学部を残し、予備試験もあると。何か全て中途半端に終わるのではないかという、ちょっとそういう危惧をするんですが。

そこで、最後に、法科大学院の在り方について質問したいと思います。

現在、二十七の法科大学院が数年以内に募集停止をすると発表しております。

つまり、これまでに設立された法科大学院のほぼ三分の一が自ら撤退すると言い出しているわけであります。

法科大学院の志願者数、入学者数、社会人数も全て減少傾向にあります。

法科大学院発足当時は入学者の半数近くを占めていた、先ほどお話がちょっとありましたが、社会人、今は全体の二割程度で、人数そのものも減少しております。

法科大学院を修了し、司法試験受験資格を得ても受験しない、いわゆる受け控え率も当初は四%にも満たなかったと。

二〇一一年では二〇%を超えているわけでありますが、これは法科大学院を出ても三回以内で司法試験に合格しなければならないということでありましたが、去年からですか、これを五回にするということで、回数制限は撤廃されたと、そのように聞いております。

ただ、これ五回不合格になり、もう一度法科大学院に行くとか、あるいは予備試験に合格すればまた受験資格が得られるということで、これでは以前問題になった、制度改革の原因となった、合格するまで延々受験し続けるという司法試験浪人と同じではとも考えるわけでありますが、前ほどはひどくはないと思いますが、そういうこともあり得ると。

こうなる原因には、法科大学院の教育の質の低下も一因と言われております。

合格率の低下、さらに入学者の減少、経営難、教育の質の低下という負のスパイラルになっていると。

そうならないような施策の一環だったとも思いますが、受験生の負担を減らすことは質の低下にもつながるわけでありまして、抜本的解決策にはならないのではないかと。

今回の回数制限緩和の効果がどれほどかは分かりませんが、それはびほう策にすぎず、このままでは早晩完全に立ち行かなくなる可能性もあると。

また、法科大学院を統廃合するという話もありますが、設立当初の設置基準をきちんとクリアして十年以上教育を続けてきた学校を国が強制的に廃止するのは、大学の自治や財産権を保障している憲法二十九条との関係で深刻な問題もはらむかと考えております。

委員長(魚住裕一郎君)

時間を過ぎておりますので、おまとめください。

田中茂君

それで、質問させていただきますが、このような状況下で法務省を始め法曹界も危機意識はお持ちだと思いますが、今後の法曹人材の育成という観点から、大臣の長期的展望をお伺いしたいと思います。

委員長(魚住裕一郎君)

上川法務大臣、時間ですので、答弁は簡潔に願います。

国務大臣(上川陽子君)

司法制度改革の、先ほど委員御指摘、理念として掲げられておりました国民に身近で利用しやすく頼りがいのある司法の構築、そのためには、それを支える質の高い法曹が多数輩出されるような法曹養成制度となることが必要であると、ここの理念については今も変わらないというふうに思っております。

しかしながら、法曹養成制度そのものの中核となる法科大学院の修了者、先ほど御指摘のとおり、司法試験合格率が当初想定されていた水準に達していないということもございまして、そういう意味では、当初の目標というか構想が十分に実現していないと、ここについては大変大きな危機意識を持って取り組んでまいらなければいけないというふうに考えております。

経済、社会の情勢も大変大きく変化をしておりますし、またグローバルな、また高齢化の時代の中の司法ニーズということにつきましても、的確な法曹が、そして質の高い法曹が養成されなければいけないし、社会に輩出されなければいけないということでございますので、そうした意味で、期待をされる法曹養成の制度になるべく、魅力のある法曹養成に向けての改革は積極的に進めていくべきというふうに考えております。

田中茂君

時間が来ましたのでこれで質問を終わりにしますが、国民への信頼が高くなるような是非とも司法制度改革へと進めていただきたいと、そう思っております。

ありがとうございました。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
ページトップへ