元参議院議員 田中しげる

しげるレポート | 田中しげるの活動報告ブログ

新型コロナウイルス―機能しない危機管理
レポート 2020/02/22

 新型コロナウイルスによる国内の感染者数が日ごとに増えています。クルーズ船の患者数を合わせると739人ということです(2月21日現在)。また日本人の死亡者が3人となりました。日本国内で感染した患者数も94人となり、明らかに増え始めています。その広がりは全国的になりつつあります(人数はいずれも2月20日現在)。政府の危機管理がまったく機能していない状況です。さらに、新型コロナウイルスの感染を判断する「PCR検査」が保険適用外であると同時に、一般の人は病院で受けられない状況にあることが報道されています。「なぜ?」と、政府の無策振りにあきれ返っている国民は多いでしょう。
 リスク管理として武漢へのチャーター機派遣はまだ理解しますが、その後の対応は危機管理にほど遠いものでした。大体、新型コロナウイルス対策の初合同会議が開かれたのが、武漢からのチャーター機が戻った翌日。危機意識の低さには驚きと同時に怒りすら感じます。2月16日に開かれた合同の対策会議では、私用の集会で何人かの大臣が欠席するという内閣自体に危機管理意識が全くないことを露呈しました。ここに至ってもなお、強力なリーダーシップを発揮する安倍首相の顔が全く見えてきません。
 中曽根康弘先生の危機管理への凄まじいまでの意識の高さは当然戦争体験があったからです。しかし先生は「大臣や総理に就任してからはかなり意識的に危機管理というものを体系的に、行政的にも研究し、対応を考えていた」と常に危機への準備を怠ることがなく、そのために政治家がいるという考えでした。また、危機にあたって極めて重要なこととして、初動の迅速さと発想の柔軟性を挙げ、その上で次のように述べています。
「役人に限らず日本人は、ややもすると自らの責任を取りたがらず、責任の押し付け合いや、なすりつけ合いなどをしますが、危機管理の際はそのようなことをやっている暇はありません。ましてや総理大臣や所轄の大臣ともなれば、みんな自分の仕事であって、みんな自分の責任だと思わなければなりません。全方位、万事即決の柔軟性を常に維持することが大事であり、事前に決められたマニュアルは役に立たないことが多いのです」。
 大島の三原山が大爆発したとき、溶岩流が流れ出し全島民と観光客合わせて1万3千人の命に危険が迫りました。この時発揮したのが、先生があげる初動の迅速性と発想の柔軟性、そして総理大臣としての責任でした。
 大爆発が起きたのは1986年11月21日の夕方4時過ぎのことでした。当時災害の所轄だった国土庁では、早速19関係省庁を集めた災害対策会議が始まりました。官邸では中曽根総理をはじめ官房長官、内閣安全保障室長など危機管理関係者がそろって会議の結果を待っていました。手続き上、会議結果を閣議決定し次の段階に進める仕組みになっていました。しかし、会議は対策本部の名称をどうするかなど、どうでもいい議論を続けている状況でした。官房長官からその報告を受けると中曽根総理は即座に「俺が全責任をもつ。内閣でやろう」と指示したのです。これは安全保障会議設置法による安全保障会議を立ち上げるという意味です。その結果、島民救出のための大船団が大島へ向かったのです。その中には自衛隊の護衛艦二隻も含まれていました。総理の独断で自衛隊を出動させることは憲法違反となります。しかし非常時でした。総理は憲法ではなく、国民を守る行動を決断したのです。国土庁での官僚たちの会議は長々と午後11時45分まで続きました(国土庁、霞ヶ関の縦割り行政の弊害)。既にそのときには船団は大島に向かっており、翌日の午前4時には、1万3千人を脱出させるという大プロジェクトは完了していたのです。大爆発からわずか12時間、トップの決断次第で、このような奇跡を実現させることができるのです。

 クルーズ船から、客が下船を始めました。14日間クルーズ船内で過ごし、2回のウイルス検査で陰性だった人たちで、その数は2月21日で1000名近くになります。下船を認可したのは厚生労働省なのでしょうが、「えっ?!」と驚かれた人も多いのではないでしょうか。下船した人たちは公共の交通機関で自宅に帰ることを許されました。しかし下船するなら、当然国内で14日間の隔離が必要ではないでしょうか?たとえば、クルーズ船の米国人客はチャーター機で帰国しましたが、全員14日間の隔離が義務付けられました。他の国々も同じ扱いをしています。日本のこの措置については、すでに米国のマスメディアなどからは疑問の声が投げかけられています。クルーズ船に対する政府の初動のミスの結果ですが、極めて危険な対応をしたように思います。下船した人たちの中にも、感染していないか不安に思っている方がいると聞きます。新しいニュースとして、陰性で下船して本国に移送されたオーストラリア人2名とイスラエル人1名が発病したことが判明しました。日本ではそのようなことがないことを祈るばかりです。
 3月15日の中曽根康弘先生の告別式も延期となりました。中曽根先生は、私の告別式など行っている時かとお怒りになっていたと思います。厚生労働省は大勢の人が集まるコンサートやイベントなどの自粛願いを出しました。多くの国民の楽しみが奪われることになります。危機管理に失敗した結果の事態です。国民は自発的に、また政府からのお願いだからと自粛に協力するでしょう。国民の義務ですから当然です。しかし、お願いをするなら自粛の期限を含め、この病気に対する厚生労働省としての見通しを明確にすべきでしょう。これまでのところ後手、後手に回るばかりで、今後の見通しについて国民は何も知らされていないのが現状です。
前のFBでも書きましたが、コロナウイルスが従来のインフルエンザのように季節の移り変わりと共に勢いを失うことを強く願います。と同時にウイルスが強いものへと変異することも考え危機管理として最悪のケースを想定しておくのは当然です。
 中曽根先生の「危機の際は総理大臣や所轄の大臣なら全て自分の仕事であって、全て自分の責任だと思わなければならない」を、もう一度噛み締めていただきたいものです。

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