前参議院議員 田中しげる

しげるレポート | 田中しげるの活動報告ブログ

新型コロナウイルスに対する危機管理
レポート 2020/02/12

「マスクとトイレットペーパー」

 昨年の12月8日に、中国湖北省の武漢市で初めて新型コロナウイルスが確認されました。最近のニュースは、決まって新型コロナウイルスの話題から始まります。2月10日時点では、日本人患者数が91人と増える一方ですし、中国の感染者は4万人を超えています。また横浜港に停泊中のクルーズ船の患者数は135人にのぼり、さらに増えることが考えられています。このような状況に対して、現在、私達が予防としてできることは、マスクの着用や手洗い、人ごみを避けることぐらいしかないのが実情です。
 ところが、日本ではすでにマスクが薬局などから消えました。春節で来日した中国人の爆買いもあったようですが、マスクを大量に購入し、高額でネット販売するような輩も出ています。新型コロナウイルスに加えて従来のインフルエンザ、花粉症の流行る時期ですから、マスクがないために多くの人が困った状況に陥っています。
 2月10日に至り、菅官房長官は定例記者会見でマスク不足に触れ、メーカーに24時間体制での生産を依頼していると述べました。しかしテレビニュースではもう何日も前から、メーカーが24時間体制で製造していることを伝えています。政府の対応の遅さと無策には驚かされます。これでは当分マスクが手に入らない状況が続くことでしょう。
 ネットで転売した行為に対し、安く買った物を高く売るのは資本主義経済の原則だから止めることは出来ないとコメンテーターが述べていましたが、過去、日本が取った政策を知らないのでしょう。
 1973年10月、第4次中東戦争が勃発し日本は石油危機に陥りました。戦争が起きる半年前に、アラブ諸国を訪れ石油の確保に奔走したのが、当時通産大臣だった中曽根康弘元総理でした。翌年10月末、不況の中でなぜか紙がなくなるという噂が流れ、主婦がトイレットペーパーの買いだめに走りました。中には180パックも買った主婦も現れました。マスコミがそれを報道することで、トイレットペーパー買いに拍車がかかりました。11月3日には尼崎のスーパーで、トイレットペーパーを買い求める長い人の列ができ、押し合いでけが人まで出る事態となりました。そのニュースは全国を駆け巡り、トイレットペーパーに対する不安が増幅されました。
 尼崎での事故の知らせを受けた中曽根通産大臣は、直ちに供給能力は十分あるので買い急ぎはしないようにとの次官談話を発表させました。
その上で
 ●緊急増産の指示
 ●メーカー出荷価格の凍結要請
 ●関西方面への緊急出荷
 ●投機防止法対象品目への指定
という対策を打ち出したのです。こうして11月5日から10日の間に200万パックを関西に緊急出荷させた結果、7日には行列が解消し、騒ぎは完全に沈静化しました。緊急対策には投機防止対策が掲げられていました。現政府もマスクを必要とする消費者の不便と不安を解消するような、具体的な政策を国民に分かる形で打ち出すべきです。

 中曽根先生がそのときのことを、次のように語っていたことを思い出します。「消費者心理というものがある。こういうときはいつもの倍程度では、すぐ棚が空っぽになってしまう。消費者はそれを見るとさらに不安になる。だから、買っても、買っても商品が山のように残る状態を作ることが大事だ。それを見ると消費者は安心して、2個、3個と買おうとはしなくなるものだ」。つまり、小出しではかえって不安をあおる結果になるということなのです。

「危機管理の初動の遅れ」

 今回の新型コロナウイルスの広がりは、何と言っても発生源となった武漢市の対応の遅さがもたらした結果と言えます。同時に中国政府の初動も大幅に遅れました。そもそも新型コロナウイルスは「サーズ」と同じように、野生動物からもたらされたと考えられています(色々な説がありますが・・・)。2003年の「サーズ」の流行は世界を震撼とさせましたが、その結果、中国政府は野生動物を捕獲することや、食べることを禁じたということです。しかし、武漢市では、市場で以前同様野生動物が食肉用に売買されていました。そこに根本的な問題があります。
 中国政府が動き出したのは、新型コロナウイルスが検出されたとの発表があってからのこと。最初の患者が見つかってから1カ月以上後のことで、本格的になったのはさらにその後の1月20日になってからのことでした。すでに感染は広がっていて、その結果が現況を作っています。習近平国家主席をはじめ党最高指導部は2月3日、対応に誤りがあったことを認めました。中国共産党としてはまさに異例のことでしたが、それだけ首脳部に与えたショックも大きかったのでしょう。
 危機に際しての対応には、リスク管理(Risk Management)と危機管理(Crisis Management)の2種類があります。日本語訳にすればどちらも危機管理ですが、目的と内容が異なります。簡単に言えば、リスク管理はこれから起きる可能性のある危険を想定、研究し、発生を抑止するための管理のことです。一方危機管理は、危機が起きたときに、そのマイナスの影響を最小限にとどめると同時に、その状態からの脱出、または回避を管理することです。つまり両者は一つの危機に対して、それが起きないようにする管理と、起きてしまった後に、その影響を最小限に食い止めようとする管理という大きな違いがあります。
中国はまずリスク管理を徹底していませんでした。2003年に起きた「サーズ」の発生の際に学んだはずのことを実行せずに、過ちを繰り返しました。また、新型コロナウイルスが発見されて、患者が日増しに多くなっていくのに、1カ月半近く対策を取ることがありませんでした。リスク管理が行われることはなく、危機管理の初動も間違えたことになります。危機管理がスタートしたときは、すでに感染は中国一国では片付かない規模になっていました。感染の広がりが、今後の世界経済に与えるダメージも計り知れません。ウイルスの感染力が衰えずに続けば、4月の習近平国家主席の来日は難しくなるでしょうし、さらに長引けば、東京オリンピックの開催にも影響が出るでしょう。

「工程表作成の必要性」

 日本のリスク管理、危機管理はどうだったのでしょうか。危機管理の初動に杜撰な面が多々ありました。1月29日にチャーター機で武漢から希望する人たちを連れ帰ったのはいいのですが、隔離するための収容先が民間ホテルの上、部屋数が足らずに一部は相部屋になりました。その相部屋になった人たちの中から新たに感染者が出ました。国の施設になぜ収容しなかったのか理解ができません。受け入れ先も決まっていないのに、チャーター機が羽田を飛び立ったという報道もあります。もし事実なら、政府の単なるパフォーマンスだったのかという疑念がわきます。また、帰国者のうちウイルス検査を拒否した2名を、家に帰らせたのも解せません。さらに相部屋を解消するために一部の人たちが、国の施設をたらい回しにさせられたことは、今回の危機管理の工程表がなく、場当たり的なものだったことをうかがわせます。実際、新型コロナウイルスに対する政府の「対策本部」の初会合が行われたのは1月30日、武漢から第1便の人々が帰国した翌日のことでした。
 一つの目標を定めた場合、その目標に辿り着くための工程表を作るのが、中曽根政治の基本でした。それも目標に向かってデータなどから帰納的に、また自由な発想などから演繹的に、素早くかつ綿密に検討しました。元総理が危機管理に極めて優れていたことは、数多くの実績からよく知られています。総理のときに三原山が大噴火した際には、全島民と観光客1万3千人を一日で大島から避難させるという離れ技をやってのけました。これは常に危機管理が頭にあったからできたことなのです。
 政府はウイルスの潜伏期間を「サーズ」や「マーズ」の例から当初最大14日間としていたものを、2月4日には10日に、それを現在は12.5日と三転させ、政府への信頼を失墜させました。後の2回はWHO(世界保健機関)の発表に従ったのでしょうが、WHOの事務局長の発言が中国寄りであり、ことの重大性を低く見積もっていたことは明白です。そもそも当初、新型コロナウイルスの世界的な危険評価を「中程度」と発表したことが、各国の対応を遅らせた原因にもなりました。その後「高い」と変えましたが、WHOの認識自体がころころ変わりました。それに合わせる必要があったのか。

 今回の新型コロナウイルスの広がりは、まだまだ続くことが考えられます。日本の感染者もさらに増えるでしょう。ところで、インフルエンザが冬に流行る理由は気温と乾燥にあります。気温の低下が鼻や喉の粘膜の動きを弱くさせ、ウイルスに対する抵抗力も低下させてしまいます。逆に気温が上がると体の動きが活発になり、ウイルスに対する抵抗力も強化されます。また夏の湿度の高さは、水分とともにウイルスを地上に落とす作用があります。乾燥している冬のように、ウイルスが長時間空中を漂うことはありません。したがって日一日と暖かくなる春になれば、インフルエンザの脅威は次第に薄れていくのです。
 考えてみると四季のある日本は、ウイルスに対しても浄化作用を備えているのです。ところが、先人が守り伝えてきた日本の自然、日本人の心も破壊が続いています。それには政治が大きく影響しています。破壊を防ぎ、よき日本を取り戻すことは政治の責任だと考えます。
 新型コロナウイルスが、従来のインフルエンザのウイルスと同じように、季節の移り変わりと共に勢いを失っていくことを願いますが、ウイルスが強いものへと変異していくことも考えられます。危機管理としては反対のケースを考えて、対策を準備しておく必要があります。各関係省庁に任せることなく、安倍首相自ら陣頭に立ち、危機管理の指揮を取っていただきたいと思います。
 危機管理には『想定外』という言い訳や、これで十分ということも決してありません。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
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