元参議院議員 田中しげる

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[会議録]田中茂 法務委員会(参議院) 2015年4月23日
会議録 2015/04/23

189-参-法務委員会-9号-2015年04月23日-初版

田中茂君

日本を元気にする会・無所属会、無所属の田中茂です。よろしくお願いいたします。

船主責任制限法の一部改正について質問させていただきますが、先ほど来皆さん同じような質問をしておりますので、一つ二つさせていただきたいと思います。

今回の責任限度額の引上げの対象は、一九九六年のLLMC議定書の批准国で責任制限手続を行う場合のみということであります。

中国、韓国はLLMC七六年条約を批准していないものの、基本的にはこれに沿った責任限度額を国内法で定めていると理解はしております。

しかし、米国とアルゼンチンについては、こういったトン数を基準とする責任限度額を採用しておらず、基本的に航海終了時の船価を限度とする制度によっていると聞いております。

そこで、米国では責任限度額は航海終了時の船価と未払運賃の合計額となって、この責任限度額が死傷損害の全額を支払えない場合には、最大一トン当たり四百二十米ドルとなっております。

そこで、前回法務省の法案説明資料にあった例として、七万トンの船舶であった場合、物的損害については書いてあったんですが、六十三億円ですか。

人的損害の責任限度額、私、計算してみると、これ百十五億円となるわけですね。

そこで、米国に関して言えば最大一トン当たり四百二十米ドル。これ、一ドル百二十円と計算して僅か三十五億ぐらいにしかならないと。

これは米国に限って言うわけですが、今回の改定により新しく適用される責任限度額とそれ以外で適用される責任限度額の差が広がるんではないかと、そういう懸念があります。

そこで、先ほど三宅委員の方からもちょっと質問がありましたが、事故が起きた場合どこの国の法律に準拠して責任制限手続を行うかでの賠償の結果が変わるおそれがあるのではないかと、そういう懸念をするわけであります。

そこで、米国船、これは締約国になってないわけでありますが、締約国でない米国船で、米国の領海内で例えば日本人が乗っていた、そういうふうになった場合に、日本の船主として、また日本人に不利な結果にならないようにすべきではないかと、そう思っておるんですが、その点の見解をお聞かせいただけませんでしょうか。

政府参考人(深山卓也君)

今委員からも御指摘があったとおり、どこの国の裁判所で船主責任制限手続が取られるかというこの国際裁判管轄の問題がございまして、これは条約や法律に明文はありませんけど、一般的な解釈では、日本の船籍の船舶あるいは日本の領海内での事故については日本の裁判所が船主責任制限手続を取れると。

しかし、今委員が例に挙げられたような米国の領海内の事故ということになりますと、アメリカの船主責任制限手続が取られて、それは、御紹介があったように、多くの場合、日本の現行の法律よりも相当責任限度額が低額になる。

その意味で、被害者が日本人であった場合には酷なことになりはしないかという御指摘だと思います。

これは、実際にアメリカで責任制限手続が取られた場合にはそういう傾向にあるというのは否めないところでございますが、我が国の責任制限制度とアメリカのそれとが異なっていると、同じ条約にアメリカが入っていないということに起因する状況で、そのこと自体は、それぞれが国家主権を持って裁判制度を運営している以上、やむを得ない面があると思いますけれども。

しかし、船主責任制度を所管する法務省としても、この制度が国際的に普遍的なものになる、つまりアメリカもこの条約を承認して締約国になっていくことによって日本と同じルールを取っていただくというようなこと、別にこれはアメリカに限りませんけれども、非締約国が同じルールを取っていただくということは非常に重要なことだと思っております。

そこで、政府一体となって、IMOの場などにおいて非締約国に対して国際条約の締結に向けた働きかけを行うべきものと考えておりますが、実際にも、今月の十四日から十六日までIMOの法律委員会が開催されましたけど、そこにおきましては、関係省庁が連携して作成した対処方針に基づいて、日本政府として、IMO事務局及び九六年議定書の非締約国に対して条約締結を促す提案を行ったところでございます。

田中茂君

まさに条約なので締約国がいるわけでありまして、なるべく締約国にそういう形で、どうすれば締約国になってくれるのか、それを推進するというのも日本の役割の一つではないかと思います。

それはまさに外務省のマターではないかと思うんですが、その辺も含めて、是非とも力、その辺は入れていただきたいと、そう思っております。

そこで、船主に関しての質問、これで終わりにしたいんですが、非常に恐縮なんですけど、流れが変わって誠に申し訳ないんですが、実は前回の委員会で論議された矯正医官の兼業及び勤務時間の特例に関する法律案、既に採択されたわけでありますが、その際の資料として配付された矯正施設の医療の在り方に関する報告書、これなかなか面白いなと私は思っておりまして、いろんな問題提起をさせていただいたと。

非常に申し訳ないんですが、話題が変わって恐縮ですけど、そこで、この件について、高齢受刑者問題にも関わる件でもありますので、幾つか質問させていただきます。

報告書で、矯正施設では、収容者の急激な高齢化、社会習慣病の増加、疾病の複雑化、多様化、一般社会における医療水準の高度化など医療需要が高まっていると書かれておりますが、どのような生活習慣病が増加しているのか、疾病の複雑化、多様化等を教えていただければと思います。

政府参考人(小川新二君)

お答え申し上げます。

刑事施設では、被収容者の急激な高齢化、生活習慣病の増加、疾病の複雑化、多様化、さらに一般社会における医療水準の高度化などの諸事情が相まちまして、医療需要が増加していると認識しております。

平成十九年以降の疾患の状況のうち、お尋ねの生活習慣病に関するものをまず申し上げますと、新生物のうちがんが三百人近く、また高血圧、脳血管疾患等の循環器系の疾患が九千人から一万人前後で、いずれも増加傾向を示しております。

また、糖尿病患者が約二千人といった高い数字で推移しているといったことが挙げられるところでございます。

次に、疾病の複雑化、高度化についてでありますが、これは例えば、医療の高度化、専門化が進み、疾病の構造や要因が詳細に分かるようになったということから、多様な症状等をより精密に細分化して把握することが可能となりまして、検査や治療がより複雑多様化したことを意味するものと理解しております。

具体的に申し上げますと、高齢化の進行による疾病構造の変化によりまして、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の割合が増加したことから、様々な病態を示す合併症が多くなったことであるとか、あるいは、医療の高度化、専門化等によりまして、これまでは発見できなかった疾患も認知できるようになりまして、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳血管性認知症など、様々なケアが必要な疾患へのより丁寧な対応が求められるようになってきたことなどが挙げられると承知しております。

以上でございます。

田中茂君

高齢化ということでそういう病気が増えてきているというのは理解しますが、そこで、私、ここに配付しておりますが、ブルームバーグから出している記事、ちょうど四月の十六日に出た記事なんですけど、ここにも若干書いてありますが、認知症患者が、現在全国で考えた場合、大体予備軍八百万人以上と言われております。

高齢者収容者の増加と併せて、今後、被収容者における認知症発生者数も増加すると見込まれますが、一般的に、発症から生存年数は六年ほどであると聞いたことがあります。

そこで、法務省の特別矯正監の杉良太郎さん、ここのブルームバーグにも書いてありますが、認知症で夜中に徘回したりした人もいると、ひどいと排せつ物を投げたり、わざと布団に粗相をしたりする受刑者もいて、刑務官の負担が増加しているとも述べられております。

現在の認知症の被収容者数と年齢構成を教えていただきたいと思います。

そこでまた被収容者が認知症であると判断された場合、どういう対応をしているのか、お聞かせください。

政府参考人(小川新二君)

平成二十四年末の刑事施設の受刑者の総数は五万八千七百二十六人おりますけれども、そのうち、脳血管性認知症あるいはアルツハイマー型認知症等の認知症又は認知症の疑いがあると診断された者につきましては百二十五名、内訳で申し上げますと、男が百十二人、女が十三人でございます。

ただし、この数字につきましては、認知症の疑いや認知症の傾向があっても診断を受けていない者は含まれておりません。

したがって、このような認知能力の低下がうかがわれる者の総数につきましては百二十五名より相当多くなると考えておりますが、現時点ではその実数については把握しておりませんで、現在、実態把握に努めているところでございます。

次に、認知症に罹患している者や認知能力の低下がうかがわれる者への対応についてでございますけれども、少数の集団に編成をしまして作業時間を短縮した上で紙細工などの軽作業を実施させるなど、可能な限り集団処遇の機会を設けまして、認知症の進行や身体機能の低下を遅らせるなどの配慮を実施するほか、必要に応じて職員が食事、入浴等の日常生活の介助を行うなど、症状に応じまして一般の受刑者とは異なる個別の処遇を行っているところでございます。

以上でございます。

田中茂君

この高齢化というのはまさに深刻な問題になってきているんではないかと、矯正施設内においてですね。

そこで、前回の委員会で大臣は、矯正施設として、被収容者に対し、その中にいる間、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし、適正な措置を講じることの必要性と、全ての被収容者が更生終了ができ、円滑に社会復帰ができる手助けになることが矯正施設と矯正医療の役割であるということも述べられましたが、私も全く同感であります。

しかし、事高齢者においては、就労機会を確保することは現実的に困難であり、体力的にもう既に弱っている高齢者に矯正医療の意味を成さないんではないかと。

要は、高齢受刑者にとっては、刑務所はもう実質的に矯正施設ではなく老齢者介護施設となっており、医療は矯正医療ではなく老人医療となってしまっているわけです。

高齢出所者の多くが再犯として戻ってくること自体が、刑事施設は矯正としての機能を果たさず、これ、あくまで高齢者に対してです、七十歳以上ぐらいはそうでしょう、高齢者に対しては、矯正施設としても矯正医療としても矯正の役割がもはやなくなっているのではと私は思っておりますので、先週ですか、仁比先生もおっしゃった憲法第二十五条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と、全くそのとおりであります。

これにはもう私も異論はありません。

しかし、憲法の第二十七条は勤労の義務、第三十条では納税の義務も定められております。

すなわち、納税者であるやはり国民の理解を得られる政策を打ち出し、それを実現するために最大限の努力をすることではないかと、そう思っております。

法務省の総合研究所研究報告三十七があるのは私も承知しております。

内容は、高齢出所受刑者及び高齢仮釈放者の実態と意識の分析であります。

これは平成十八年に公表され、今から八年も前のことであります。

既にその段階で高齢受刑者についての問題意識が共有されていたと私は認識しておりますが、それに対する抜本的な対策が打っていないのではないかと。

そこで、四月十六日、先ほど紹介しましたブルームバーグの記事、刑務所を出るのが怖かったという被収容者の例が取り上げられております。

これは、社会福祉士の支援で養護老人ホームに入所した出所者や支援プログラムを頼りに更生しようとする出所者の話で、まだまだ数は少ないですが、こうした動きが少しでも広まれば高齢受刑者の再犯にも一助となるのではと、そう思っております。

国民の理解と納得を得るためにも、社会福祉士の充実を含め、厚労省の地域生活定着支援センター、それらの関連機関との連携を更に強化して機能させないと意味がなくなってきているのではと。

それを通じて、高齢者再犯防止のためのシステムの充実と積極的な運営を再度強調し、説明が長くなりましたが、時間となりましたので、私の質問とさせていただきます。

日本に生まれ育ち、一生を過ごしたいと言える「誇りのもてる国」
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