元参議院議員 田中しげる

しげるレポート | 田中しげるの活動報告ブログ

G7サミット
レポート 2024/06/17

 岸田文雄内閣総理大臣は、6月13日から15日までイタリアで開催されたG7プーリア・サミットに出席されました。
 今回のコラムでは、中曽根先生がどのようにサミットへ臨まれたかを簡単に紹介します。
 中曽根先生は、『天地有情~五十年の戦後政治を語る』インタビュー:伊藤隆、佐藤誠三郎(文藝春秋)の中で、以下の如く述べています。
「佐藤:会議(サミット)ではつくられたペーパーを読むようなことはしなかったそうですが……。
 中曽根:ウィリアムズバーグを最初に、ロンドン・サミット、ボン・サミット、東京サミット、ベネチア・サミットのいずれも、開催一ヶ月ほど前から何度も勉強をやってシナリオを想定しましたね。
何がテーマになるのか、どんな事態が起こるのか、とくに、為替、金利、貿易インバランスやマクロ経済政策、そして、対ソ安全保障問題やその年に起きたトピックスを検討し、前年の会議での合意結果をトレースしました。
そうして、日本が主張すべきことを一枚の紙にメモし、それだけを持って会議に出たんですよ。だからペーパーを読み上げるようなことはしなかった。
もともとサミットというのは首脳同士が直接かつ率直に話し合う場なんですね」。
 今回のサミットでもペーパーを読んでいた岸田首相の発言には、日本や外国の人たちへの説得力はなかったでしょう。

 プーリア・サミットで岸田首相は、「インド太平洋地域と欧州の安全保障は不可分一体だ」との表明もされました。
 実は、過去にも同様の発言をしたのが中曽根先生でした。
 ウィリアムズバーグ・サミットで、ソ連が中距離核ミサイルSS20を展開したのに対し、米国が高性能のパーシングⅡを配備するかの論争があった時のことでした。
 核ミサイル保有国の仏国ミッテラン大統領は独自の国防戦略を持ちNATOの指揮下には入らないと、政治声明をだすことに反対しました。独国のコール首相も、核戦争の犠牲になるのはドイツであり、ドイツの国内事情を考えてほしいと反対したのです。
 そのときに中曽根先生は、「日本はNATOの同盟国でもなく、平和憲法と非核三原則を掲げており、従来の方針ではこういう時は沈黙すべきものである。しかし、あえて賛成するのは、ここで西側の結束の強さを示しソ連を交渉の場に引きずり出すためである。決裂して利益を得るのはソ連だけだ。大切なのはわれわれの団結の強さを示すことである。……いまや、安全保障は世界的規模かつ東西不可分である」と、反対の方たちをだまらせて、ウィリアムズバーグ・サミット成功の一因となったのです。
 
 このサミットで通訳をされていた横田謙氏(故人)に、そのときの様子を聞いたことがありました。横田氏は、「とにかく驚いた。日本の総理がペーパーなしで、的確かつ独自の見解を堂々と述べられた」と、私に話しをされたことがあります。ちなみに、横田氏が歴代総理の中で最も尊敬しているのは中曽根先生だと言われていたのを懐かしく思い出します。
 
 今回のサミットで中曽根先生ならどのような発言をされていたかと考えさせられます。

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