元参議院議員 田中しげる

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[会議録]田中茂 国土交通委員会(参議院) 2014年6月10日
会議録 2014/06/10

2014年06月10日国土交通委員会pdf

田中茂君

みんなの党の田中茂です。

早速ですが、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律一部改正につきまして質問をいたします。

まず第一なんですが、北極海の商業運航の可能性と海洋汚染についてお聞きしたいと思います。

近年、北極海の海氷が減少し、北極海における夏季の商業運航も増加しており、北極海ルートは重要な航路となる潜在的可能性を秘めています。

一方、北極海の航行船舶、商業運航の利用増加に伴い、同海域において事故や汚染も高まるのではと懸念されます。

国交省は北極海ルートに関する省内検討会を設置し、北極海航路に関する自然的、社会的状況の把握、技術的、制度的課題、経済的課題及び当該航路の実現に伴う影響等を検討、整理するとしていると伺っておりますが、現在の取組状況について国交省の御見解をお伺いします。

政府参考人(西脇隆俊君)

お答えいたします。

まず、北極海航路につきましては、委員御指摘のように、まず北極海の海氷が減少していること、それからスエズ運河経由と比較いたしまして航行距離を約六割に短縮できることのほか、海賊多発地帯を回避できるというようなことがございまして、欧州と東アジアを結ぶ新たな選択肢となる可能性があるというふうに認識しております。

北極海航路の利用件数及び輸送の貨物量でございますが、平成二十二年以降急激な増加傾向にございます。

我が国への輸送動向につきましても、平成二十四年の十二月にLNGが北九州に運ばれたほか、平成二十五年におきましてもナフサ、LNGなど三件の輸送実績がございます。

一方、北極海航路の航行は依然として夏場の数か月に限られています。

また、沿岸国であるロシアが航行の安全確保や海洋汚染防止の観点から砕氷船の同伴等の規制を課しており、その運用実態にも留意する必要があるというふうに思っております。

今御指摘のように、国土交通省といたしましては、まず平成二十四年八月に省内の関係部局をメンバーといたします北極海航路に関する省内検討会を設置いたしまして、北極海航路の利活用の可能性、それから利活用に当たりましての技術的、制度的、経済的な課題等につきまして調査検討を進めているところでございます。

さらに、本年五月には、海運事業者や荷主並びに関係行政機関が集まりまして、それぞれの持つ情報の共有を図ることを目的とする官民連携協議会を設置しております。

引き続き、北極海航路の利活用の促進に関する調査を進めますとともに、官民連携協議会を通じまして積極的に関係者間での情報共有を図り、その得られた情報を分析することによりまして利活用に関する検討を更に進めてまいりたいと考えております。

なお、北極海を航行する船舶の航行の安全、それから海洋汚染の防止のための技術基準につきましては、現在、国連の専門機関でございます国際海事機関、IMOにおきまして、低温で氷に囲まれるという極海の特有の事情を勘案した追加的な技術基準を定める極海コードというものの策定に向けて検討が進められておりますので、国土交通省といたしましても、持続可能な北極海航路の利活用に向けまして、IMOの加盟国等と連携いたしまして極海コードの策定に積極的に貢献してまいりたいというふうに考えております。

田中茂君

ありがとうございます。

ロシアとは外交上様々な不安定要素はあるんですが、北極海ルートは欧州との海運のみならずロシア北部の資源の輸送上も重要な航路となる可能性もありますので、先ほど答弁でありました安全基準、この辺の策定も含め、更なる取組をお願いしたいと思います。

次に、海上災害対策と体制について御質問させていただきます。

二〇一〇年四月二十日、メキシコ湾沖で米国史上最悪とも言われる原油流出事故が発生したことは記憶に新しいところであります。

原因は、イギリスのBPの石油掘削施設で掘削中の海底油田から逆流してきた天然ガスが引火、爆発したことによるものでありました。

BPの賠償額は二百億ドルにも上り、賠償基金も払底しているとされています。

日本においてはこのような掘削中の事故が発生する可能性はほとんどないと思いますが、タンカー事故は十分に想定されます。

現に、先々週、五月二十九日に播磨灘でタンカーの炎上事故が発生し、死傷者五名という痛ましい結果となりました。

このような状況を踏まえて、我が国において海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づく油流出事故に対する防除資機材、防除体制、関係機関との連携は十分であるのか、海上保安庁にお伺いしたいと思います。

政府参考人(佐藤雄二君)

お答えします。

海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律におきまして、油の排出があった場合、必要となる防除措置については原則として原因者の責任により行うこととしており、これら防除措置義務者が必要な措置を行わない場合には、措置を講ずるべきことを海上保安庁長官が命じることができるようになっております。

他方、委員御指摘の災害の発生直後や大規模な油流出事故が発生した場合には、海上保安庁は、警察、消防機関、地方整備局、地方公共団体、排出油等防除協議会などと連携し、必要な防除措置を実施することとしております。

防除資機材につきましては、タンカーの船舶所有者等に対し、オイルフェンス、油処理剤等の資機材の備置きを義務付けております。

また、全国十六の海域ごとに必要な資機材の整備目標を定めた排出油等防除計画により、海上保安庁のみならず、海上災害防止センター、石油業界、関係事業者等が連携協力し、全国に所要の資機材を確保しているところでございます。

田中茂君

ありがとうございます。

今のお答えに関して更にちょっと質問させていただきたいんですが、確かに日本ではメキシコ湾のような原油流出事故の可能性は低いと思います。

が、しかし、地震が発生したときの海上火災の可能性を考えれば十分な対策を講じることが喫緊の重要課題であると、そう考えております。

東日本大震災の際には、千葉県市原市のコスモ石油千葉製油所のLPG貯蔵タンクが爆発、炎上しました。

また、東京湾や仙台港で発生したこのようなコンビナート火災発生以外にも、破壊した船舶や石油タンクなどから流出した油が海上で火災を引き起こし、流れ着いた家屋の残骸などにも燃え移り、被害を大きくしました。

このような被害を想定することは容易ではないとは思いますが、可能性としてどの程度の被害規模を想定し、日頃からいかなる緊急時危機管理計画を練っているかが極めて重要であると思っております。

外洋における油流出事故対策として現場燃焼処理という方法が効率よいという話も聞いております。

が、しかし、東京湾ではそのような対策を講じることは不可能であります。

南海トラフ地震の可能性に加え、首都直下型地震が発生する確率が七〇%であると現在言われておりますが、東京湾における災害時の海上火災、湾岸火災等へのシミュレーション、海上保安庁の災害対策計画、訓練の実施などの対応はどのようになっているか、海上保安庁にお伺いしたいと思います。

政府参考人(佐藤雄二君)

お答えします。

震災による東京湾の被害想定といたしまして、平成二十五年十二月に中央防災会議のワーキンググループにより、首都直下型地震に伴い、東京湾沿岸において流出約六十施設、破損等約七百三十施設の被害が発生するとの想定がなされたほか、南海トラフ地震による自然災害など、様々な被害想定や計画の策定等が政府レベル及び関係する地方公共団体において行われております。

海上保安庁では、海上保安庁防災業務計画によりこれらの想定を踏まえた災害応急対策を定めており、災害発生時には全国から巡視船艇、航空機を派遣するなどし、人命救助、海上火災消火、油防除、緊急物資輸送などを実施することとしております。

また、これらの海上災害の想定を踏まえまして、東京湾において、関係機関と連携し、流出油事故対策訓練、石油コンビナート消火訓練、津波漂流者救助訓練などを実施しているところでございます。

田中茂君

ありがとうございます。

さらに、関連して質問させていただきます。

米国では、ICSと呼ばれる非常時指揮システムが一九七〇年代から開発されており、先ほど言いました二〇一〇年の原油流出事故でも有効に機能したと聞いております。

元々山火事対策で整備されたものが、その後、広く事故や災害、そしてテロへの対応に利用され、さらに今から二十五年も前に、一九八九年ですが、OPA90という法律では、三段階に分かれておりまして、第一段階が連邦政府による直接指示、第二段階が地域特有の危機管理計画、第三段階が施設、船舶所有者等の対応計画の策定と、このように構成された緊急時の危機管理計画があります。

このような事故や災害などに、非常時に対応できるものと、この三段階アプローチがあると聞いておりますが、日本もこの三段階アプローチと同様の制度になっていると伺ってはいます。

そこで、海上に流出した油の除去等、海上防災業務を行う中核機関として設置された独立行政法人海上災害防止センターが昨年十月に解散し、一般財団法人となり、引き続き、民間の防除事業所と連携した体制、ノウハウ、資機材等も継承しているとは思いますが、油流出等の事故、災害への対応については今後もこの体制で十分なのか、また、消防庁など各省庁との連携はいかに行うか、今後どのような面の施策において拡充が必要であるか、お考えなのかを海上保安庁にお伺いしたいと思います。

政府参考人(佐藤雄二君)

お答えします。

油流出事故災害が発生した場合に大切なことは、直ちに可能な限りの勢力を投入し的確な対応を図る必要がありますことから、海防法においては指定海上防災機関を指定し、官民を挙げた総合的な海上防災体制を構築しているところでございます。

一般財団法人海上災害防止センターは、独立行政法人から承継した専門的知見、技術等を駆使するとともに、民間法人化によって可能となった弾力的な業務運営により、これまで以上に海上防災体制の中核的な機能を発揮しているところでございます。

また、政府としては、油等汚染事件への国家的な緊急時計画を策定し、当庁を始めとする国土交通省、消防庁、水産庁、経済産業省、環境省等から成る関係省庁連絡会議の開催や合同訓練の実施などを通じて、災害対処能力の向上や連絡体制の確立に努めているところでございます。

海上保安庁では、これらを踏まえまして関係機関との新たな協定の締結やマニュアルの見直しを随時行い、災害現場における組織的な対応を強化しているところでございます。

田中茂君

ありがとうございます。

我が国では、大災害時に確かに災害対策本部や緊急災害対策本部等が設けられますが、横の連携が十分ではなく、あるいはうまく連携できないまま作業を進めるようないわゆるサイロ型の体制では、スピード感が求められる事故対応にはうまく機能しないと言われてもおります。

危機管理には何よりも初動の早さとリーダーシップ、そしてそれを具体化できる権限と指揮命令系統の明確化が必要だと思います。

私は、日本でも米国のICSを参考にしてこのような指揮命令系統を明確化したシステムの法整備をすべきときではないかと考えますが、他省庁との絡みもありますが、是非とも国交省としてイニシアチブを取っていただいて、その辺、御検討をお願いしたいと思っております。

あと一点、時間がありますので、バラスト水についてお聞きしたいと思います。

有害バラスト水による水質汚染や生態系への悪影響は以前から指摘されていたことから、今国会、法改正による対策強化は非常に歓迎すべきものであると考えております。

二〇〇四年のIMO採択を批准していない国もまだ多数あり、今年度中に見込まれる要件充足による条約発効でどの程度効力が発揮できるか若干疑問の余地はあるものの、今回の法改正で一定の効果は期待できると見込まれ、日本としても積極的に支援していただきたいと考えております。

そこで、有害なバラスト水の処理設備の設置義務は環境面からも必要であり評価できますが、一方で、バラスト水処理設備が基準に適合しているかということも検査等に、明確に確認する必要があると考えます。

その点、国交省としてどのように処理設備の基準への適合を担保しようとい らっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

政府参考人(森重俊也君)

お答え申し上げます。

バラスト水処理設備の基準適合性につきましては三点で担保しております。

まず第一に、バラスト水処理設備そのものにつきまして、IMOで定めた基準に適合し、適切に機能するものを型式指定いたします。

この型式指定に当たりましては、陸上試験や船上試験を行いまして適合性を確認いたします。

第二に、船舶に設置された状態で船舶検査を実施することとしております。船舶検査におきましては、この処理設備につきまして、型式指定を受けたものであるか、有効に稼働するように適切に設置されているかを確認いたします。

第三に、入港する外国船舶に対しまして立入検査、PSCを実施することとしておりますが、このPSCにおきまして、排出基準への適合性を証明する有効な証書を備え置いているかを確認いたします。

また、状況に応じまして、排出されるバラスト水のサンプル検査、これを行うこととしております。

田中茂君

ありがとうございます。

バラスト水処理装置の需要の高まりで我が国の技術開発を支援し、国際的なイニシアチブを取ることにより海事産業の国際競争力の強化や市場の確保、拡大にもつながると、そのように思っておりますが、さらに環境面での貢献もできると思われますので、引き続き対応をよろしくお願いしたいと思います。

ちょっと時間は余っていますが、ここで私の質問は終わりにします。

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