元参議院議員 田中しげる

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[会議録]田中茂 法務委員会(参議院) 2015年3月26日
会議録 2015/03/26

189-参-法務委員会-3号-2015年03月26日-第2版

田中茂君

日本を元気にする会・無所属会の無所属の田中茂です。

まず、大臣の所信表明の中の、国内外の日本人の安全確保について質問をさせていただきます。

今年の一月にISに拘束されていたお二人の日本人、残念ながら殺害されました。

また、先月、外務省は、メディアを通じてシリアへの渡航計画を表明したフリーカメラマンの杉本祐一氏に対し、安全確保を理由に、旅券法に基づいてパスポートの返納を命じ、没収いたしました。

今回、杉本氏は、事前にシリア行きをメディアで公表しており、言わば確信犯であったと思います。

そのため、外務省が事前に渡航計画を知り、さんざんそれを思いとどまるよう説得したにもかかわらず翻意させられなかったため、パスポート没収という結果になったわけであります。

このような公表もしなければ実は危険地域に渡航することも現実的には可能でありますが、ISに殺害された日本人お二人も事前に説得されたようでしたが、最終的には渡航し、あのような残念な結果となりました。

菅官房長官、日本人が無断でひそかにシリアへ渡航しようとした場合、対応は困難との認識を示されております。

確かに、官房長官がおっしゃったケースでは困難とは思いますが、大臣は、所信表明の中で、テロ対策に絡み、法務省として、国内の安全確保はもとより、国外の日本人の安全確保にも万全を期してまいりますとおっしゃっておられます。

法務省としてどのような対策をお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

国務大臣(上川陽子君)

国外の日本人の安全確保への対策ということでございますが、まず、国際テロに関しましてあらゆる情報を収集し、そして分析をしていくということが大変大事だというふうに思います。

法務省の取組といたしまして、公安調査庁におきまして情報収集の強化に努めるということでございますし、これを関係機関にしっかりと提供をし、相互に連携協力をすることで政府全体としての国外における日本人の安全確保の一翼を担っているところでございます。

また、当方におきましては、国際テロリズム要覧というのを海外に進出している企業の皆さんにも提供をしておりまして、こうした要覧の要約版につきましてはホームページにおきまして広く一般に提供するという形での取組もしっかりと行っているところでございます。

さらに、こうした取組について努力をしていきたいと思っております。

また、法務省におきましては入国管理という現場がございます。

この入国管理の今度出国をする日本人に対しまして、外務省が今、退避勧告を発出している国・地域、こうしたところに渡航をしようとするという日本人に対しまして、渡航の中止等を促すために、外務省から御提供いただいた渡航情報のお知らせにつきまして、全国の約五十の空海港の出国審査場に掲示をするということで意識喚起を促しているところでございます。

この出国審査場でございますけれども、海外に渡航する方が必ず通過する場所ということでございますので、ここで海外渡航に関する情報そのものを提供するということは、私は非常に有効なことではないかというふうに思っております。

田中茂君

二〇二〇年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定でありますが、そのためテロの可能性が一気に高まってきつつあるのではないかと思っております。

確かに官房長官おっしゃったあのようなケースを防止するということはかなり不可能だとは思っておりますが、直接的効果がなくてもあらゆる手段を講じることによって何らかのテロ活動に対する牽制になると思いますので、法務関連としてできる限りのことはやっていただきたいと思っております。

次に、少年法に関しての質問をさせていただきます。

川崎市で、複数の未成年者が年下の十二歳の中学生を殺害した事件はまだ記憶に新しいところであります。

これまで、未成年者による大きな事件が起きるたびに少年法の是非が問われ、若干ではありますが改正をされてきております。

今、また厳罰化の方向にあると言われてもおります。

確かに少年院送致が十四歳以上から十二歳以上となり、有期刑の上限も十五年から二十年へと引き上げられ、十四歳以上二十歳未満であれば刑事処分が相当と判断した少年を検察官に逆送することができると。

つまり、逆送されて起訴された場合は成人と同様に地方裁判所で審判を受けることとなっております。

少年法の理念は更生と保護にあるわけですが、昨今起きている事件はその理念を揺るがしかねないような気がしております。

一九八八年に、当時未成年の少年たちが東京綾瀬で女子高生を監禁し殺害してコンクリートに詰めて遺棄したという、世間を震撼させ、極めて凶悪な事件がありました。

その犯人である少年の一人は、二〇〇四年の仮出所後、再び監禁致傷事件を起こして逮捕されております。

この少年については、この事件を脅し文句に使うなど、全く更生した様子は見られなかったと聞いております。

様々な事件で更生した多くの方たちもいるとは思います。

現行の少年法の枠で処分対応、保護観察することが果たして効果的であるのか、今疑問を感じておるところでありますが、そのような中で選挙権の年齢引下げに合わせて少年法の適用を十八歳未満にとの声が出てきております。

今皆さんのお手元に配付しておりますが、G8諸国の各種法定年齢ということです。

これを見ますと、選挙権、ほとんどの国は十八歳で、それに合わせて刑事手続において少年として扱われなくなる年齢も大体十八歳となっております。

これは当然といえば当然だと思っておるんですが、選挙権を与えるということは国の法律を作る国会議員を選ぶ権利も持ったと。

国の形を変えることもできる権利でもあります。

選挙権付与十八歳引下げが成立した場合、十八歳以上に選挙という権利を与えられたなら、その代わりに生じるのは、当然、義務と責任を負うということであります。

この場合の義務は投票であります。

責任は、その投票によって選ばれた国会議員により決められた国家の基本である法律を守り、社会の一員として生活していくこととなるわけであります。

ましてや、国民投票権においては国の根本原則の憲法に関わる権利をも得るということであります。

仮に選挙という権利を十八歳以上に与え、少年法での二十歳未満となれば、権利だけを与え、社会の一員としての責任を負わないという矛盾が生じてくるかもしれません。

したがって、選挙権年齢を引き下げた場合は、民法の成人年齢の引下げにも関わりますが、少年法の改正が必要になるのではと思うんですが、この点について大臣のお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。

国務大臣(上川陽子君)

委員から御指摘ございました少年法の適用対象年齢につきまして、刑事司法全般において、この少年法につきましては、成長過程にある若年層をいかに取り扱うべきかということに関わる問題であるということで、少年法固有の観点から検討を行う必要があるというふうに考えているところでございます。

先ほどの、御指摘いただきましたけれども、様々な改正がこの間行われてまいりましたし、また十八歳、十九歳の者に対しまして、保護処分というようなことについてのいろいろな御指摘もいただきました。

そして、今、少年法の適用対象年齢を満十八歳未満に引き下げることが相当か否かにつきましては、御指摘のように、公職選挙法あるいは民法等のより一般的な法律による年齢の在り方も考慮に入れる必要もあるというふうには考えておりますけれども、直ちにその保護処分の必要性が失われているというふうな評価をする段階ではないというふうに考えております。

必要な検討は更に行ってまいりたいというふうに思っております。

田中茂君

国民投票法実施まであと三年半ぐらいありますが、その間にはきっちりとその辺整合性を合わせていただきたいと思っております。

特に選挙権というのは、先ほど言いましたように、権利を与えるんであれば義務が生じるのは当たり前で、その後に責任が来る、だからこそこの社会の秩序が成り立っていると思っておりますので、その点も考慮して検討していただきたいと、そう思っております。

次に、こういう凶悪な犯罪、川崎の事件のような凶悪な犯罪が起きたときに殊更感じることとして、犯罪関係者の保護が考えられます。

今回の川崎事件、犯人が未成年であれば、少年法六十一条により、いわゆるマスコミに関する規制である程度の加害者のプライバシーは守られるわけであります。

ただ、今回はインターネットを通して、加害者、加害者の家族を含め、実名入りで誹謗中傷やデマの情報も垂れ流し状態でありましたが、被害者は、被害者及びその家族であるというだけで、プライバシーなどほとんどない状態になっていました。

確かに、犯罪被害者等基本法が成立した、犯罪被害給付制度により、被害者に対してある程度金銭的な補償をすることは可能になっております。

ですが、加害者もそうですが、被害者及びその家族が、守らなければいけないものはほかに数多くあります。

特にインターネットを通じてだだ漏れになっている状態で、少年法六十一条との整合性の問題も出てきます。

こういったものに対して早急な対応が必要だと考えておりますが、この点について御見解をお伺いします。

政府参考人(岡村和美君)

一般的に、インターネット上における個人のプライバシー侵害、名誉毀損等は被害が重大となるおそれが高く、人権擁護上看過できない問題だと認識しております。

法務省の人権擁護機関では、インターネット上の人権侵害を含む人権問題について、全国の法務局の窓口、電話等で人権相談を行っております。

この人権相談等でインターネット上の人権侵害について被害の申告を受けた場合、私どもでは被害者に当該情報の削除依頼の方法を助言するほか、調査をいたしまして、その結果、名誉毀損、プライバシー侵害等の人権侵害に該当すると認められるときには、法務局が当該情報の削除をプロバイダー等に求めるなど、適切な対応に努めているところでございます。

田中茂君

また、大臣の所信表明で「犯罪に戻らない・戻さない」宣言がなされ、犯罪者となった人を責任ある社会の一員として再び受け入れることが自然にできる社会を目指し、こうした者の住居と就労の確保を中心に、国が地方、さらに地域コミュニティー、国民の皆さんと手を携えて共に歩む新たな時代の取組であるとしておられます。

趣旨はよく理解しておりますが、もちろん反対するものでもありません。

さらに、大臣がおっしゃった、何よりも大事なことは国民の安全を確保することであります。

更生に失敗したと思われるような犯罪者をその地域に野放しにするようなことはあってはならないことだと考えております。

そこで質問でありますが、むしろ再犯防止ということであれば、一部の国で導入されているような性犯罪者に対するGPS監視のような制度を設けるか、又は他国の例を参考にしつつ、抑止力を高め、再犯防止に効果のある方法を考えるのも必要ではないかと思っております。

この点、過去には何度も同じ質問があったかもしれませんが、御意見をお聞かせください。

政府参考人(黒川弘務君)

まず、法務総合研究所の調査によりますと、委員御指摘のGPSを含む位置情報確認制度につきましては、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデン、アメリカ、カナダ、韓国で運用されております。

その他の再犯防止施策として、例えばイギリスでは複数の機関で性犯罪者及び暴力犯罪者に関する情報を共有し、これらの犯歴を有する者を監督する制度が運用されておりまして、またカナダなどでは犯罪者処遇プログラムとして薬物乱用処遇プログラム、性犯罪者処遇プログラムなどが運用されていると承知しております。

我が国におきましても、受刑者処遇プログラムとして、平成十八年から、刑事施設において薬物依存離脱指導、性犯罪再犯防止指導等を導入しているところでございます。

田中茂君

再犯防止ということを強調して私はこの質問をさせていただいたんですが、抑止力が高まる何らかのものがあれば、ある程度考慮して実行していただきたいと、そういうふうに思っております。

次に、質問ですが、先日、私、仙台の宮城刑務所の視察をいたしました。

受刑者の高齢化が進んでいるのも事実であります。

ある意味で、刑務所が高齢者の介護施設化しているケースが増えているというのも聞いております。

微罪で再犯を繰り返す受刑者が増え、刑務所を住まいとするようでは、国民の税金で犯罪者を快適な状況で養うということにもなりかねません。

実際、刑務所生活の方が楽で、人を刺すためにためらいはなかったとして、強盗致傷などの罪で何度も逮捕されている人もいると聞いております。

法務省の方針として、施設内での処遇と社会での処遇を連携させ、改善更生の見込みのある者は早めに社会復帰を促す、また大臣の所信表明では、一たび犯罪や非行をした者を責任ある社会の一員として再び受け入れることが自然にできる社会を目指すと述べられておられます。

しかし、高齢者は再犯を繰り返し、刑務所に戻りたがると。これでは刑務所が抑止力になっていないと、そのように考えざるを得ません。

今後の法務省の方針の運用に当たって大臣はどのように考えていらっしゃるのか、お考えをお聞かせください。

国務大臣(上川陽子君)

ただいま再犯防止について御質問をいただきまして、さらに、高齢化が進んでいるという実態につきましても、御視察をいただいた上での大変現実に即したお話をいただきました。

刑務所出所者が犯罪を犯して再び刑務所に入所すると、この再入者の数自体は実は減少をしております。

そして、入所者に占める割合ということでございますけれども、刑務所に入所する者の総数が減少する中で再入者の減少率が相対的に小さいということでございますので、その結果、再入者の割合というのが平成十六年以降上昇を続けている、そして平成二十五年には約六割を占めていると、これが実態でございます。

再入率を低下させる、そういう意味で、再犯防止というのは非常に大事なことであるというふうに思っております。

先ほど御指摘いただきました居場所、そして仕事、こうしたことを確保するということが何よりも大事ということでございまして、そういう目標に向かってこの間、取組を進めてきましたし、またこれからもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

今、高齢の受刑者が増えているということでございまして、実は高齢の受刑者数は残念ながらこの二十年間ほぼ一貫して増加をしているところでございますので、そういう意味で、入所受刑者総数に占める高齢受刑者の比率も増加をしているというところでございます。

また、全体として見ても、再入者の割合も高くなっているということでございます。

高齢受刑者の再犯防止という取組につきましては、大変重要で喫緊の課題であるというふうに認識をしているところでございます。

対策ということでございますけれども、まず、適当な帰り先がないというような高齢受刑者等で自立した生活ができない者に対しましては、厚生労働省の事業として都道府県が設置をしております地域生活定着支援センター、そちらとしっかりと連携をして、そして出所後速やかに社会福祉施設への入所でありますとか生活保護の受給などの福祉サービスを受けることができるような、必要な調整ということで、これ特別調整ということでございますが、取り組んでいるところでございます。

また、就労し、自立した生活を送ることが可能な高齢の受刑者に対しましては、前科を承知で出所者等を積極的に雇用していただく、その更生を応援してくださる協力雇用主の方々にも大きな協力をいただきながら、矯正施設とハローワーク、これが密接に連携をし、そして働く場所、そして求人のマッチングというのも促進をしながら就労の確保に努め、そして自立した生活をしっかりと送っていただくことができ、そして二度と戻らない、そして戻さないと、こういう趣旨を生かしていくということが大事ではないかというふうに思っております。

こうしたことにつきまして、さらにこうした制度につきましても御協力、御理解をいただくことができるように、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

田中茂君

矯正施設内の医師不足で、今国会にも関連法案が出ておりますので、受刑者の処遇を改善することが不要であるとは私も考えておりません。

ただ、犯罪とは無縁に平穏に暮らしている納税者、また、いまだに二十二万人もいるという東日本の被災者である仮設住宅への入居も余儀なくされている方もいらっしゃいます。

このような方々への対応にも力を入れることが必要な中で、そういう矯正施設における医師不足への対応について大臣も所信表明で述べられましたが、そういう高齢受刑者に対しての矯正施設における待遇改善よりも、社会の一員として受け入れられることがむしろ急務であると私もそう思っておりますので、是非ともその点は、高齢者に対する就労そして住まい、その点を確実にやっていただきたいと、そう思っております。

時間が来ましたので、私の質問はこれで終わりにします。

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